中国減速が多国籍企業に迫る「戦略の再考」 国際的企業にとって「天の恵み」だったが

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中国が2桁成長を記録し、外国企業がわれ先にと同国に進出した2000─2010年のような日々はもう戻ってこないかもしれない。習国家主席は3日、今後5年間の成長率は7%前後になるとの見通しを示した。

中国政府が、これまで自国経済を支えてきた輸出と投資主導の成長モデルから舵を切ろうとする中、企業は戦略の見直しを迫られている。

「一般的に、成長をひたすら追い求めることから、事態の複雑さを認識する方へと恐らくシフトしている」と、米衣料小売り大手ギャップ<GPS.N>のグレーターチャイナ(中国・台湾・香港)担当ゼネラルマネジャー、アビンタ・マリク氏は、前述の上海会議で、本社の意向がどのように変わったかとの質問にこう答えた。

中国の消費者の嗜好が洗練され、一部の企業はそれに応じた商品開発への投資を増やしている。

「商品の再開発を行っている。欧州でやっているのと同じようにイノベーションやリノベーションに投資している」と、スイスの食品大手ネスレ<NESN.VX>のポール・ブルケCEOは語った。同社は先月、長期成長目標に今年は届かないとの見通しを示している。

中国の李克強首相は1日、「中国は大規模な市場を持っており、可能性もある。潜在的な消費力は完全には発揮されていない」とし、「中国の現在の消費は(潜在能力の)半分だと考える。まだ十分な拡大余地がある」と述べた。ただ問題は、消費がまだ工業製品の需要落ち込みの穴を埋めてはいないことだ。

「個人消費は急速に高まっているが、従来の産業投資の減少を相殺するには至っていない」と、スイスのエンジニアリング大手ABB<ABBN.VX>のウルリッヒ・シュピースホーファーCEOは先週、第3・四半期決算で純利益と売上高の減少を報告した後でこのように述べた。

成長を求めて

中国の消費者が成長し、裕福になり、情報を得るにつれ、ヘルスケアは見込みのある分野と言える。

「根底にある基本的なことは何ら変わらない」と、米ゼネラル・ エレクトリック(GE)<GE.N>のジェフ・ボーンスタイン最高財務責任者(CFO)は10月、自社のヘルスケア・テクノロジー事業についてこう述べた。「いまだ15億人の人口がいて、また病院を建設している。民間のマーケットは1四半期で15─20%成長している」

第3・四半期に中国の売り上げを伸ばしたスイス製薬大手ロシュ・ホールディング<ROG.VX>は、主力のがん治療薬市場の成長は堅調で、後発医薬品(ジェネリック)に直面し、低迷する既存の同社製品の売り上げを補っているとしている。

一方、中国での自動車販売の伸び悩みは、独自動車大手BMW<BMWG.DE>のような世界的メーカーに、自動車金融や補修、保険などでいかに最大限の売り上げを上げるかを指南するディーラー教育プログラムを強化させている。

また、サービス部門は中国経済における数少ない明るい材料の1つだ。財新/マークイットが4日発表した10月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は52.0と、3カ月ぶりの高水準となった。

ABBのシュピースホーファーCEOは、同社が予備の備品や各部門のコンサルタント業務などを提供するサービスセンターを新たに開設したとし、「顧客はまだサービスの提供をあまり受けていない。われわれはそこを大いに強化している」と語った。

(原文:Adam Jourdan、John Miller 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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