「一億総活躍」社会を実現する具体的処方箋 省力、学習、公正の3つが課題解決のカギ

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少なくとも、ここでの「一億総○○」という言葉遣いには、皆で画一的に何かを目指すとか、右へ倣えで少数派の人にも何かを政府が押し付けるといった意図はない。ならば、各人が十人十色で充実した生活を送ることは、個人個人がそれぞれに目指せばよいのであって、政府がそこまでお節介を焼く必要はない。そう思う読者もおられよう。それは一つの正論である。

ただ、昨今、格差是正を政府に求める声は強いし、老後の生活を自分や家族だけでは支えられず老後扶養の社会化はますます進んでいて、政府はお節介を焼くなとも言っていられない現実がある。その背景に思いを致すと、国民の中に依然「政府・国民の二分法的発想」があると思われる。

この言葉は、拙共著『日本政治の経済分析』(木鐸社)で初めて用いたのだが、政府を「お上」として、国民とは関係のない統治者とみる発想である。つまり、国民にとって、政府とは他人のような別の主体であり、基本的には日常生活に政府は干渉しないでほしいと思っている。その半面、困ったときややり場のない不満があるときばかりは政府に責任を求めたり、政策の実行を求めたりする発想でもある。

努力の力点を改め、努力が報われる形に

しかし、わが国は民主主義国家である以上、政府は国民のものであり、国民は政府の意思決定に何らかの形で関与する主体である。政府と国民は別物であるという発想が背後にあると、せっかくの新たな取組みも有機的に政策形成に結びつかない。過保護・過干渉はいけないが、政府がいかにうまく政策的に関与するかが問われている。

(言い回しの好みは不問として)「一億総活躍社会」の実現に向けて、政府はいかに適度に日本で暮らす人々とかかわるか。「一億総活躍社会」を実現するために求められる3つの取り組みを、あえて「一億総○○」と称して挙げながら、筆者の考えを述べたい。

1つ目は「一億総省力」。日本人はおおむね真面目だが、真面目過ぎて逆に努力が報われない面が、目下、災いしている。労働時間を費やせば所得が増えたり、成果が上がったりする、と思いきや、なかなかそうならない。そのため、徒労感があったり、やる気を失ったりしている。さらにこれが、若者が結婚できなかったり、子育ての余裕がなかったりする一因ともなっている。

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