日本人はいま、絶滅の危機にさらされている 不妊治療の現場で30年、ベテラン医師の見解

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――ということは、不妊が増えている原因は、単に妊娠を望む女性の年齢が上がっているからということでしょうか?

そうです。だからこそ、妊娠可能な年齢について、もっときちんと知らせていく必要があります。

ストレスは直接の原因にはならない

――ストレスが原因で妊娠しにくいというのはあるのでしょうか?

もちろん、ストレスが何らかの体調不良を引き起こすことはあります。また、仕事のストレスで疲れ果てて、性行為自体が減ってしまうことも不妊の原因として考えられるでしょう。

しかし、ストレスが直接不妊の原因になるわけではありません。過酷な生活を強いられた戦時中でも、女性は妊娠していたのですから。生物学的に見ると、むしろそのような生命としての危機感が高まったときほど、妊娠率が高いという見方もあります。

――ちなみに、男性も加齢とともに生殖力が低下するのでしょうか?

確かに男性も40代から妊娠率が少し下がります。しかし、精子はさほど劣化せずになくならないため、現代の生殖医療の技術を使えば、どんな人でも精子さえあれば一生子どもを作ることができます。それが女性と男性の大きな違いです。

――私たちはもっと自分の体について知る必要がありますね。

そうです、若いうちから正しい知識を身につけておくことが重要です。そうしなければ不妊で苦しむ人が増え、日本の少子化にも歯止めがかかりません。そして、いずれ日本人が絶滅するというシナリオが現実のものになるかもしれないのです。

マスコミでも教育の場においても、もっともっときちんとした情報を広めてほしいと願っています。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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