TPP、コメ「関税維持」で消費者が被る不利益 「聖域」とされるコメの政策は矛盾だらけ

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ジリ貧のコメ産業は構造改革が求められている(写真:ひでお/PIXTA)

「交渉を成功裏に終結させられたことを喜ばしく思う」

10月5日、TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意後の記者会見で、米通商代表部のマイケル・フロマン代表がこう述べると、参加した12カ国の交渉官の間で大きな拍手が湧き起こった。

TPPは、世界のGDP(国内総生産)の4割弱を占める、巨大な自由貿易協定だ。甘利明TPP担当相は「12カ国のルールは、21世紀の世界のルールになっていく」と誇らしげに胸を張った。

5年に及んだ交渉が終結

2010年の交渉開始から今回の合意に至るまでは、長く厳しい道のりだった。最後の交渉となるはずだった7月末の閣僚会合は、各国の利害が対立して物別れに終わった。今回も当初は9月30日、10月1日の2日間の予定だったが、紛糾して5日までずれ込む事態となった。

米大統領選挙などの日程を考慮すると、今回の交渉が決裂すれば、数年単位で合意が先送りされる可能性もある。その意味では、ギリギリのところで折り合った、というのに近い。今後は、2016年初にも各国が最終的な協定に署名し、国内での承認を経たうえで発効に至る予定だ。

TPPへの期待は大きい。日本は少子高齢化、人口減少期を迎えている。TPP域内で投資に関する透明性の高いルールが策定されることで、日本企業は海外で経済活動を行いやすくなるとみられる。AIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立し、アジアで主導権を握ろうとする中国を牽制する意味合いもある。

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