つらい「7K職場」が劇的改善した3つの理由 30歳までに女性の7割が辞める会社が激変

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取材に応じてくださった同社の福永哲弥専務は、「収益を追求する中で、業務改革を踏まえての効率性向上も考えられないと中間管理職として評価されないという認識は浸透したと思う。ただ、どうやって削減しなさいという、箸の上げ下げまで経営サイドや人事から指示をすることはしなかった。実際に自分の部署でどう収益を上げながら労働時間を削減するかは現場のリーダーたちが判断し、彼らが優秀だったから達成ができた」と評していました。

3つ目は、子育て中の女性やそのほかの制約ある社員を特別視せずに、管理職を含めた全社員を対象とし、働き方改革のメリットを全員が感じられる仕組みになっていたこと。これが非常に重要だったのではないかと思います。

当初、残業削減や有給休暇取得の目標に対して「本当にやるの?」「そんなこと言われても忙しいのに」と半信半疑だった管理職。彼らが動き出し、潮目が変わったのは改革を開始してから4カ月たった8月以降だといいます。

それまで、長期休暇を取るに取れなかった管理職が思い切って夏休みを取ってみると、自分がいなくても仕事が回ること、家に帰ると家族が喜ぶこと、リフレッシュした後に職場に戻ると生産性が上がると感じたこと、などを実感したとのこと。そこから管理職たちが部下を休ませること、早く帰すことに本気になっていったといいます。

女性の離職率が大幅に改善

SCSKでは、当初から「生産性」が必ず改善するという定量的な見込みがあったわけではありませんでした。でも、「人は財産」という考えのもとにこの改革を実行し、結果的に合併時から売り上げや利益は上がり続けており、1人当たり営業利益なども改善しています。

「生産性」の観点から言うと、システム会社が効率よく質のいいものを作ってくれるというのは、顧客企業にとっては「工数が減る」ということなので、顧客利益にも合致していました。システム会社にとって最も赤字につながりやすいのはいわゆるトラブル発生によって工数が想定以上にかかり、費用を回収できない「不採算案件」です。頭がフレッシュな状態でシステム開発に向かうこと、企業として時間がかかっている案件を早めに特定することなどが不採算案件を減らし、利益率を改善させた面もあるかもしれません。

売り上げが上がっているのは当然、景気動向や業界環境とも関係があるので、SCSKの利益が上がっているのが、残業削減や健康経営の効果だと結論付けることは難しいと思います。ただ、長期的に見て、コスト面でも明らかにSCSKに利益をもたらしているといえるのは「優秀な人材の採用・確保」でしょう。「人を活かす会社」として有名になり、内定辞退率や離職率が格段に改善しているそうです。

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