インドネシア新幹線、「白紙撤回」の裏事情 手痛い失敗から日本は何を学ぶべきか
7年がかりの日本側の努力は、水泡に帰すこととなった――。9月3日に白紙撤回された、インドネシアの高速鉄道計画である。2009年から日本政府による事業化調査が進められ、一時は日本の受注が確実視されていたが、紆余曲折の末、計画そのものが消滅した。
インドネシアの人口は約2億5000万人(2013年)。経済成長に伴い、交通渋滞も深刻化しており、大都市間の大量輸送が可能になる高速鉄道の導入は悲願とされていた。
同国の高速鉄道計画は、ジャワ島を横断する形で首都ジャカルタ―バンドン―チレボン―スマラン―スラバヤ間(全長730キロメートル)に新線を建設し、時速300キロメートルで走るというものだ。
日本政府による事業化調査の結果、多くの旅客需要が期待できるジャカルタ―バンドン間(全長144キロメートル)から着手することが決まった。高速鉄道が完成すれば、これまで車で3時間かかっていた同区間が、37分で結ばれるという。
政権交代で状況が一変
日本側の計画では、工期は1年の試運転期間を含めて5年。2018年に着工すれば、2023年に運行を開始できる。総事業費64兆ルピア(5346億円)。そのうちの75%を、金利0.1%の円借款で賄うというもの。残り25%は、政府や民間企業などインドネシア側による調達を求めていた。
日本の受注は確実と思われていたが、2014年10月にジョコ・ウィドド氏が大統領に就任したことで流れが変わった。ジョコ氏は道路や港湾などのインフラ整備を公約に掲げており、高速鉄道にも前向きと思われていた。ところが、そうではなかった。今年1月、ジャワ島の高速鉄道には着手せず、他地域のインフラ整備を重視する方針を打ち出したのだ。
ジョコ大統領は3月22~25日に来日し、安倍晋三首相らと会談。ジャカルタ都市鉄道の整備に日本が円借款で支援する方針が確認されたものの、高速鉄道について進展はなかった。
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