吉野家が「客の求めない商品」を販売した理由 河村社長に聞く、値上げ後の客数回復への道
――コンビニエンスストアを中心に中食市場の攻勢も目立つ。
ここ10年でコンビニ商品は日進月歩で品質を向上させてきた。勝負するうえでは、同じ土俵に乗ってはいけない。対抗して出店数を増やすのではなく、コンビニができないことをやっていく。2年前に出した牛すき鍋膳がよい例だ。
6月末には、“ちょい飲み”ができる業態「吉呑み」を360店まで拡大した。居酒屋よりも安く済むので、客数も順調に増えている。現在は都市部が中心だが、ロードサイドでの実験もしており、さらなる拡大余地があるか検討中だ。
――国内の出店余地についてはどう見ているか。
当面はスクラップ&ビルドが中心となる。店舗の形態についても、市場に合わせたフォーマットを浸透させていきたい。同じ吉野家でも、立地によっては持ち帰り専門店があってもいい。
ビジネス街では従来の高速回転型の店舗が求められていると思う。ロードサイドはテーブル席を増やしていくが、ベンチシートやソファーの席があってもいい。これらを3年ぐらい続けた後で、再び店舗網を拡大していきたい。
吉野家は"西"を目指す
――M&Aや海外展開については?
買収については、大企業というより若い起業家たちを支援していきたい。たとえば、3店しかない飲食店を100店にしたいといった手助けができればと考えている。
吉野家は国内1200店に対し、海外は660店。数年後には、海外の店舗数が国内を上回るだろう。2月にマレ―シアで東南アジアの展開部隊を作った。彼らに指示したのは「GO WEST!」(西を目指せ)。未開拓の中東、インド、アフリカにも吉野家やはなまるを広げていきたい。
――事業会社である吉野家の社長に就任してから約1年が経つ。前社長であり、吉野家HD会長である安部氏とは、どのようにコミュケーションを取っているのか。
かつては「厳しい師匠」のような存在だった。最近は月2回ほど話す機会があるが、何を言ってもニコニコしている。まるで「親子」のみたいな感じ(笑)。真逆の意見をぶつけたことも昔はあったが、今では強力な応援団のような存在だ。
(「週刊東洋経済」2015年9月5日号<8月31日発売>「この人に聞く」に加筆)
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