吉野家が「客の求めない商品」を販売した理由 河村社長に聞く、値上げ後の客数回復への道

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――コンビニエンスストアを中心に中食市場の攻勢も目立つ。

ここ10年でコンビニ商品は日進月歩で品質を向上させてきた。勝負するうえでは、同じ土俵に乗ってはいけない。対抗して出店数を増やすのではなく、コンビニができないことをやっていく。2年前に出した牛すき鍋膳がよい例だ。

6月末には、“ちょい飲み”ができる業態「吉呑み」を360店まで拡大した。居酒屋よりも安く済むので、客数も順調に増えている。現在は都市部が中心だが、ロードサイドでの実験もしており、さらなる拡大余地があるか検討中だ。

――国内の出店余地についてはどう見ているか。

当面はスクラップ&ビルドが中心となる。店舗の形態についても、市場に合わせたフォーマットを浸透させていきたい。同じ吉野家でも、立地によっては持ち帰り専門店があってもいい。

ビジネス街では従来の高速回転型の店舗が求められていると思う。ロードサイドはテーブル席を増やしていくが、ベンチシートやソファーの席があってもいい。これらを3年ぐらい続けた後で、再び店舗網を拡大していきたい。

吉野家は"西"を目指す

河村泰貴(かわむら・やすたか)●1968年生まれ。93年に吉野家ディー・アンド・シー(現吉野家ホールディングス)入社。2004年にうどんチェーン「はなまる」へ出向。07年はなまる社長。12年に吉野家HD社長。14年9月から事業会社・吉野家の社長を兼任(撮影:今井康一)

――M&Aや海外展開については?

買収については、大企業というより若い起業家たちを支援していきたい。たとえば、3店しかない飲食店を100店にしたいといった手助けができればと考えている。

吉野家は国内1200店に対し、海外は660店。数年後には、海外の店舗数が国内を上回るだろう。2月にマレ―シアで東南アジアの展開部隊を作った。彼らに指示したのは「GO WEST!」(西を目指せ)。未開拓の中東、インド、アフリカにも吉野家やはなまるを広げていきたい。

――事業会社である吉野家の社長に就任してから約1年が経つ。前社長であり、吉野家HD会長である安部氏とは、どのようにコミュケーションを取っているのか。

かつては「厳しい師匠」のような存在だった。最近は月2回ほど話す機会があるが、何を言ってもニコニコしている。まるで「親子」のみたいな感じ(笑)。真逆の意見をぶつけたことも昔はあったが、今では強力な応援団のような存在だ。

「週刊東洋経済」2015年9月5日号<8月31日発売>「この人に聞く」に加筆)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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