瀕死の通貨「ユーロ」の命脈は尽きている 続ければ続けるほど悲惨な結果を招く

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一方、政治的なダメージは進行中だ。抗議している政党すべてが、ギリシャ与党の急進左派連合のように欧州統合支持派なわけではない。そして国内政治は、中道政治家らがユーロ圏の経済政策と「民主主義の赤字」に対する有権者の懸念と向き合う能力を欠いていることで歪められている。これと向き合うことは、欧州統合懐疑派に暗黙の支持を与えることになり、タブーなのだ。

ユーロ終焉のタイミング、早めの決断を

フランスでは、社会党のオランド大統領が仏経済学者セイの言葉を借りて「供給はそれ自身の需要を創造する」と論じている。一方、極右の国民戦線の党首ルペンは、米経済学者のクルーグマンやスティグリッツの言葉を支持して引用している。労働者階級の有権者が国民戦線の支持に回っているのも不思議ではない。

国民戦線が2017年か2022年に選挙で勝利すれば、欧州の計画は破壊される。ユーロ圏の小規模な加盟諸国の国民は、ギリシャに関するドイツの目標を達成するためにECBが容赦なく政治化されたことに気づき、ユーロ圏は小国にとって危険な「統合」であるという結論に至るのは避けられそうにない。中道の諸政党が抗議をせずに様子見を続ければ、政治的に過激なグループが支持を増やすことになる。

ユーロの終焉はとてつもない危機を招く。が、今から1世紀後もユーロが現在の形で存在していると本当に思うか、自問してほしい。答えがノーならユーロは終わりを迎えるのであり、その終焉のタイミングが「適切」であることは決してない。さらなるダメージを受ける前にすぐに取りかかったほうがいい。

週刊東洋経済8月22日号

ケビン・オウローク 英オックスフォード大学教授

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英オックスフォード大学オールソウルズ・カレッジ教授。専門は経済史。

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