日本の財政破綻は起こるのか起こらないのか ギリシャ問題を機に日本の財政を考える

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水野和夫(みずの かずお)/1953年、愛知県生まれ。日本大学国際関係学部教授。早稲田大学政治経済学部、埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程終了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、民主党政権時代の、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。主な著書に『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日本経済新聞出版社)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)など。

古川:国民が「日本は本当に豊かになった」という実感を持てるようになったのは、1985年のプラザ合意以降ではないでしょうか。「地球の歩き方」が出版されて、誰でも気軽に海外旅行ができるようになったのも円が強くなったからです。

いまや日本のGDPにしめる輸出の割合は15%ほどですから、円安で仮に輸出が増えたところで、経済全体には大きな影響を及ぼさないのです。むしろ食べ物でもなんでも、値段の安い物の多くは輸入品です。したがって「少しでも安い物を」と安さを求めて生活防衛をしている一般庶民にとっては円安の進行で安い物の値段が上がり、生活が苦しくなって消費が低迷し、経済の足を引っぱっています。

――しかし、経団連を支える輸出型の大企業の経営者は、円安は善であると考えています。その主張を受け入れたのが安倍政権です。

古川:大企業の経営者はほとんどがサラリーマン経営者で、こうした人たちは自分の在任期間の業績しか考えていないからではないでしょうか。東芝の不正経理問題に象徴されるように、長い目で見れば、そうした短視眼的な発想はいいはずがありません。

――3つ目のテーマは壮大なもので「資本主義は終わるのか」。これは水野さんからご説明をお願いします。

「資本主義」はすでに終わっている

水野:もう、すでに終わっています。それを終わっていないことにしようとするから、いろいろなところに弊害が出ているのです。

とはいえ、資本主義をどう捉えるかによって、答えは変わってきます。フランス革命以降、王様ではなく国民のための仕組みとして生まれたのが資本主義と社会主義で、どちらの方がより大きな生産力を持ち、国民に応えられるかを競ってきました。

社会主義は兵器を作って見事に軍人の要求に応えました。そして、資本主義はテレビ、洗濯機、冷蔵庫といった「三種の神器」と呼ばれるものを作って、国民の期待に応えてきました。資本主義はその後、ものすごく国民の要求に応えられるようになった。特に日本では、欲しいものがあれば深夜3時であっても歩いて買い物に行ける環境を整えました。つまり国民一人ひとりが王様のような要求をできるようになったのです。

でも、こういった資本主義はもう終わっていますから、そうはっきりさせるため、葬式をしたらいいと思いますよ。

小幡:“資本主義2.0”についてはどうなんですか。水野さんの本のタイトルにもありますが、終わっているんですか。

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