異様なほどギリシャに肩入れする、IMFの真意 誰も語らない、ギリシャ危機の「核心」

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ギリシャのGDP成長率は甘く見積もられている?(写真 : AP/アフロ)

おそろしく昔の話のように思えるが、ユーロ圏が発足した1999年1月1日の時点でギリシャは、創設メンバー11カ国には含まれていなかった。財政赤字がGDPの3%未満にとどまることという条件を満たせなかったからだ。

ギリシャがユーロ圏のメンバーになれた不思議

その2年後の2001年1月1日には、ギリシャはユーロ圏最初の追加メンバー国となったが、そのときに提出された「財政上必要とされる基準を満たした」という財務データは、のちに粉飾された数値だったことが暴露されている。

つまり、ギリシャには本来ユーロ圏に参加している資格がなく、少しでも早く税収を増やすなり、公共部門の支出を減らすなりして、財政赤字の削減に取り組まなければならないはずだった。

ところが、2008~09年の国際金融危機の中でドイツなどのユーロ圏主要国の間でも、一時的に財政赤字がGDPの3%未満という基準を満たすことのできない国が続出し、ギリシャの公共部門の財務体質改善は、ほとんど進まなかった。いや、進まないどころか、相変わらずGDP自体が小さい割には気前よく国家支出をバラまく国であり続けたというほうが正確だろう。

次のグラフの上段をご覧いただきたい。

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(上)ウェブサイト『Market Oracle』、2015年7月1日、(下)『Acting Man』、7月1日のエントリーより

ユーロ圏より多くの国をカバーするEU28カ国の中で、ギリシャは国民1人当たりの国家支出が非常に高くなっていることが分かる。EU全体の平均が6755ユーロ(約88万円)なのに対して、ギリシャは8073ユーロ(約105万円)に達していた。EU諸国の中には、もちろん、ドイツ、オランダ、フランス、イギリスといった経済規模でも、国民1人当たりGDPでもギリシャより高い水準の国が多いのに、その平均値と比べてこれだけ高かったのだ。

さらに、EUへの加盟が1993年のマーストリヒト条約締結以後と遅かった中欧、東欧を中心とする16カ国の平均値は5123ユーロ(約67万円)でユーロ圏全体の平均値よりもっと低くなっている。ギリシャ経済の現状が、EU創設時からのメンバーが多い西欧・北欧・南欧諸国と、あとから参加した国が多い東欧・中欧諸国のどちらに近い水準かといえば、後者のほうだろう。つまり、ギリシャの国家支出はそうとう背伸びをした高さなのだ。

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