中国人民銀行が人民元切り下げ、経済指標の不振で 経済指標不振、約3年ぶりの安値水準に

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[上海 11日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は11日、人民元<CNY=SAEC>を切り下げた。経済指標の不振を背景に、人民元を約3年ぶりの安値水準に誘導した。

人民銀行は、市場の実勢をより適切に反映するためとして、対ドルでの人民元<CNY=CFXS>基準値の計算方法を変更すると発表。人民銀行は今回の措置について、2%近い「一度限りの切り下げ」と説明した。

人民銀行は「中国の物品の貿易は比較的高水準の黒字を維持しているため、人民元の実効為替レートは他の多くの通貨に対してまだ比較的強く、市場の見方からかい離しつつある」と指摘、「そのため、市場のニーズに応えるために基準値の設定方法を改善することが必要だ」とする声明を発表した。

週末に発表された7月の貿易統計によると、中国の輸出は前年同月比8.3%減と、予想以上に落ち込んだ。また、卸売物価指数(PPI)は40カ月連続の下落を記録、およそ6年ぶりの低水準となった。

方正証券のエコノミスト、Guo Lei氏は「このところ輸出が低迷しており、輸出への圧力を和らげるための措置だったとみている。輸入デフレ圧力の緩和も狙いだろう」との見方を示した。

人民銀行は基準値の設定を通じて人民元を管理している。人民元は1日につき、ドルに対して基準値の上下2%の変動が容認されている。

人民銀行によると、今後基準値はマーケットメーカーのクォートと前日終値に基づいて決定される。11日の基準値<CNY=SAEC>は1ドル=6.2298元で、前日の基準値6.1162元から大幅な元安水準となった。

これまで基準値の設定方法は公表されておらず、市場では相場を誘導するために基準値が利用されているとの見方が多かった。

基準値の新たな設定方法では、従来よりも市場の実勢が反映される度合いが高まり、今後数週間、元安が続き、世界的な通貨安競争を引き起こす可能性もある。

ただ、基準値の設定では、今後も当局が大きな権限を握るとの見方が多い。

<通貨安競争>

元切り下げを受けて、11日の市場では豪ドルが1%急落。韓国ウォンにも売りが出た。

ただ、通貨安競争への懸念はそれほど高まっていない。

みずほ銀行(シンガポール)のエコノミスト、Vishnu Varathan氏は「重要なのは、今後数日の元相場の方向性だ。本当に一度限りの調整なのか、持続的なトレンドになるのかを見極める必要がある」と述べた。

中国政府はこれまで、内需拡大、企業の海外投資促進、人民元の国際化に向け、「強い人民元」を目指してきたが、今回の切り下げはそうした政策の修正を意味する。

人民元は前日まで、横ばい圏での動きが続いており、市場では、人民銀行が国有銀行を通じて元を買い支えているとの見方が浮上していた。

<SDRへの人民元採用>

一方、今回の切り下げは7月の貿易統計に対応した措置ではないと指摘するエコノミストもいる。

コメルツ銀行(シンガポール)のZhou Hao氏は「週末に発表された貿易統計が弱い数字となったことを受けた決定ではないだろう」と指摘。むしろ、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)への人民元採用を意識した決定だとの見方を示した。

同氏は「人民元がSDRに採用されるためには、市場メカニズムに基づいた人民元相場と相場の変動が必要だ」と語った。

IMFは今月公表したスタッフ報告で、現行のSDR構成通貨を2016年9月末まで維持すべきとし、人民元のSDR採用に向けた動きは控えるべきと提言。中国の為替制度改革の進展に関してはまちまちの見解を示した。

*内容を追加します。

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