だからインスタグラムはSNSの勝ち組になる 「ノロマ戦略」が功を奏するワケ

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フェイスブックの子会社になったことによる利点は二つある。一つは、リオウサス氏が指摘するとおり、フェイスブックのエコシステムや、広告のノウハウを応用できること。もう一つ、さらに大きいのが、新興企業にもかかわらず、じっくりと時間をかけて収益化に取り組めることである。

この点は、インスタグラムにとっては特に重要だ。その理由は、同社の利用者がひときわユーザー体験に対して高い期待感を抱いていることがある。

アプリを開けばわかるが、インスタグラムのデザインは極めてシンプルで、利用者の画面には自分や自分がフォローしている利用者の写真がタイムラインの要領で表示されるだけ。多くはキャプション程度の文章しか書かれていない。ただし、掲載されている写真に特徴がある。ただの食べ物の写真であっても構図か凝っていたり、加工されていたりと、いかにも「おしゃれ風」だ。

ブランディング広告に特化

つまり、利用者の多くは自分がフォローしている人たちのおしゃれな写真や動画を見るためだけに使っており、このユーザー体験を壊さないようにすることが広告を展開するうえでの一番の課題なのである。

この点は、インスタグラムも当然認識しており、「(米国で)最初に広告を始める際、インスタグラムのユーザーコミュニティにわれわれが広告でやろうとしていることを理解してもらうために、慎重かつ自制心を持ち、ときにはゆっくりと時間をかけてサービスを始めた」(スクワイヤーズ氏)。

「まずは自分たちのブログで、広告についてわれわれがどう考えているか、どういう風に広告を展開しようと考えているかを説明した。そのうえで、インスタグラムに見合ったブランドを選んで、最初の広告キャンペーンを行ったんだ」

同時にインスタグラムでは広告の目的を、商品の宣伝というよりむしろ、ブランドの認知度向上や、世界観を浸透させることに絞った。これを徹底させるために、営業担当者とは別に「クリエイティブショップ」と呼ぶ専門部隊を設置。クライアントや広告代理店と共同で、インスタグラムに見合った広告を作る支援を行っている。

インスタグラムのクライアントは幅広く、広告に対するニーズも異なりそうなものだが、「いずれも共通のニーズがある」とスクワイヤーズ氏は言う。「たとえば、ブランディングの目的がある場合は、インスタグラムがそのブランドに対して人々が特定のフィーリングを抱くきっかけになり得るし、新たな商品群について特定のメッセージを伝えたい場合はインスタグラムを通じてそうすることもできる」。

インスタグラムを通じてブランドや商品の認識が向上したというデータも出始めている。

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