「抗生物質未使用」鶏肉が米国で増えるワケ 日本は遅れをとっていないか?

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パーデューが抗生物質を排除しようとし始めたのは10年以上前のことだ。そして2007年には、「抗生物質不使用」と表示できる商品を「ハーベストランド」というブランド名で販売し始めた。

広告も打たず、「パーデュー」の名前も表示されていなかったが、ハーベストランドは成長していった。同社のイノベーションセンターで行われた消費者によるテストでは、消費者はつねにハーベストランドのほうがほかのパーデューの製品より味がよいと評価した。

ハーベストランドの成功により、同社は抗生物質排除の有効性を認識した。2011年には、パーデューを所有するFPPファミリー・インベストメンツがコールマン・ナチュラル・フーズを買収。コールマンはオーガニックで「自然のままの」食肉を製造する企業だ。これにより、一夜にして豚肉と牛肉がパーデューの製品群に加わることになった。

現在では、ハーベストランドは2億ドル規模の事業になっている。パーデューのシニア・バイスプレジデントで食品の安全と品質を担当するブルース・スチュワート・ブラウンは、「コールマンからは多くのことを学んだ」と述べた。

パーデューが製造過程から抗生物質を排除し始めた時、死亡率が少し上がり、コストはそれ以上に上昇したという。獣医師でもあるスチュワート・ブラウンは、「このやり方のコストを削減できるようになるまでに14年かかった」と話す。「今でも費用は少し余分にかかる。だが、孵化場を清潔にすればするほど、ニワトリにとって養鶏場に移る段階でのメリットは大きい」。

一方で、パーデューは今でも批判にさらされている。昨年、農場の動物の生活向上を唱道するグループ「コンパッション・イン・ワールド・ファーミング」が公表したビデオで、パーデュー向けに育てられているニワトリが狭い小屋で糞の上で暮らし、お腹の毛が抜けて赤く腫れ上がっている様子が映し出されたのだ。

飼育方法への批判にも対処

ジム・パーデューはこのビデオに関して尋ねられると、「動物を人道的に扱うとはどういうことなのか、その考え方は人によって異なる」と述べた。さらに、ニワトリが人道的に扱われているかパーデューが確認する方法を、農務省も認めたと言う。

ジム・パーデュー氏(写真:Jeremy M. Lange/The New York Times)

パーデュー向けにニワトリを育てている人々は、鶏小屋の床に敷くわらの扱い方に関して、すでに新たな方法に従っている。また、ジム・パーデューは、ニワトリの生育環境の改善に関して、同社がいくつかの方法を開発していると述べた。

では、パーデューが鶏肉業界で繰り出す次の手は、ニワトリの育て方の変革なのだろうか。ジム・パーデューは答えなかった。その代わりに、「ニワトリをもっと幸せにしたい」と述べた。

(執筆:Stephanie Strom 記者、翻訳:東方雅美)

© 2015 New York Times News Service

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