ドコモさん、NOTTVには早く「英断」を下そう <動画>「恐怖心」からムリに始めた事業では

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今やNTTドコモの「お荷物」とまで言われるようになった、スマホ向け放送サービスのNOTTV。以前からこの事業に対し「スマホ専用の放送局なんていらない!」と苦言を呈してきた夏野剛氏が、今ドコモ経営陣に主張したいこととは。

 

NTTドコモが過半の資本を持っているNOTTV(運営会社はmmbi)の話題が出ていましたね。当期純損失500億円超。すごいですね。

今年3月に行われたNOTTVの新サービス発表会

そもそも「最初からうまくいかないことは(経営陣も)分かっていたんじゃないか」というようなことも書いてありましたが、もしそうだとしたら、これは本当に経営陣失格ですよね。

実際、このNOTTVの議論をしているところに僕も役員としていましたが、「いけるんだ!」と主張する人はいました。

そもそも大きな会社の中で新しいビジネスが立ち上がるときというのは、少数の「いけると思っている人」と、大多数の「難しいと思っている人」がいるものです。そういう意味では、「難しい」という声がある中で進めたこと自体には、経営陣の責任はないと思います。

キャリアの商売としてどうなのか

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

ただ、今回のことを考えてみると、いけると言っていた側のロジックがあまりにも薄かったかなとは思います。

電波の割り振りはかなり政策的に行われているので、「この電波帯域を取らなければ競合他社に取られる」という「恐怖心」からムリにでも(新事業を立ち上げて)取りにいったというところがあったのではないでしょうか。

しかも、今のドコモの販売の仕方を見ていると、地デジのワンセグチューナーが付いている端末、特にAndroid端末を買おうとすると、すごく強い口調で勧誘され、このNOTTVのサービスを付けられている人もいますよね。

確かにこれを付けると(顧客側に)インセンティブがあって、「その分本体価格が安くなりますよ」とか、いろいろなことを店頭で言われるわけです。でも、実際にサービスを使っていないのに、(契約が自動更新して)月額料金を払い続けている人が、たぶんたくさんいるはずです。

そういう商売をキャリアがやること自体、僕はあまりよくないと思っています。もうこのNOTTV、これだけ当期損失が出て、これから先の見込みもほぼないと思うので、早めに撤退するか、あるいはこの電波帯域を別の用途に使えるよう総務省と交渉するとか、ドコモには早めの「英断」を要求されていると思います。

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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