北朝鮮、「100年に1度の大干ばつ」は本当か 「農作業に支障なし」という地域も多数?

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塩害による被害で苗が枯れてしまった北朝鮮の協同農場(平壌の北に位置する平安南道温泉郡で)

国営メディア自ら「100年に一度の大干ばつ」と報道している北朝鮮。実際に、北朝鮮の農作物の状況は悪いのか。世界食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)などの国際機関は今年春ごろから、「深刻な水不足で田植えなどに悪影響を及ぼし、今年の食糧事情が悪化する」と繰り返しアピールしてきた。では、実際に北朝鮮の作況はどうなのか。

海水を人為的に農場に引き入れ、塩害も発生

「昨年から水不足がひどくなり、今年はさらに心配の度合いが高まった。北朝鮮の気象関係機関である気象水門局気象予報処予報部のシン・ミョンオク予報部処長(57、女)氏は、こう打ち明ける。

6月下旬当時、昨年から、全国の貯水池に水が満ちている状態が見られなくなったとし、北朝鮮最大の貯水池ダムであるスプン湖でさえ、「死の水位、すなわち危険な状態といえるほど水位が下がってしまった」と付け加える。これは、農業用だけでなく発電用など、全国数百ものあらゆる貯水池ダムはほぼ同じような状況という。

では、農場などではどう対処しているのか。気象水門局気候研究所農業気象研究室のキム・ヒョンウ室長(48、男)は、「これまで研究を重ねてきた節水型農業法で対処している」と説明する。

実際に、今年の田植えの時期に水が足りず、そうなることを見通して、事前に節水しながら田植えができる方法を農場員らが実施、地上で得られる水を最大限節約しながら、地下水を引き上げる作業を行って水を確保していたようだ。

だが、それでは足りず、対症療法的な方法で水を確保したところもあり、それによる悪影響があったようだ。キム室長は「(平壌を流れる)大同江(テドンガン)から海水を多く引き入れることで、貯水池の水位を人工的に高める方法を採った」と言う。これは、海水と真水が一緒になってもすぐには混ざらないという性質を利用し、海水の量で真水を押し上げようとするためだったという。

この方法で一時的に効果を得られたものの、その後に雨が降らず、貯水池に真水を貯めることができなかったために、そのまま海水だけが増えてしまった。

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