日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略 土屋剛俊、森田長太郎著 ~最大の破綻リスクは社会保障政策にあり

日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略 土屋剛俊、森田長太郎著 ~最大の破綻リスクは社会保障政策にあり

評者 中里 透 上智大学経済学部准教授

景気の先行きを考えるうえで、ソブリンリスクは電力不足と並ぶ大きなリスク要因となっている。米国債の市況はスタンダード&プアーズによる格下げ後も堅調に推移しているが、格下げをきっかけとして生じた為替と株価の乱高下は、経済の不確実性を増大させている。ユーロ圏ではイタリアとスペインの国債利回りが一時急上昇し、欧州各国は財政問題と金融不安への新たな対応を迫られている。

ムーディーズが日本国債の格下げを発表するなど、日本についても財政悪化に対する懸念が高まっているが、こうした中にあっても10年物国債利回りは1%近辺の水準で安定的に推移している。先進国の中で最悪とされる財政状況のもとで「安全資産」として円が買われ、長期金利が低位安定を続けていることは、日本経済の「謎」のひとつであるが、本書はこの問題について興味深い解答を提示している。

日本の財政問題については、いたずらに危機をあおるような議論やあいまいな印象論が少なくないが、本書では具体的なデータをもとに丁寧な分析がなされている。たとえば、国債発行残高と家計が保有する金融資産残高を比較して、いつ頃財政危機が生じるかといった予測がなされることがあるが、本書を読めばこのような単純な比較によって「国債の消化余力」を論じるのはかなりナイーブな議論だということがよくわかる。

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