原発事故が子どもに強いる厳しい生活、郡山市で「安心して遊べる場」が大盛況

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 現時点では、放射能が子どもや妊婦の健康にどの程度の影響を及ぼしているかは定かでない。福島県産婦人科医会の幡研一会長(明治病院院長)は、「現在の放射線レベルであれば、妊婦や胎児への影響はないと考えられる。現に妊婦や生まれてきた子に異変はない。食物摂取による内部被曝に注意する必要はあるが、過度の不安を抱くことのほうが悪循環を招く」と指摘する。

だが、妊婦の不安は強く、「今まで約2割あった里帰り出産がほぼ皆無になった」(幡院長)。郡山市でも、小中学生や幼稚園児を持つ家庭の転居が相次いでいることで、小児科を受診する子どもの数も大幅に減少している。

 郡山市内で小児科の有床診療所を営む菊池医院でも、「震災前に1日に90~110人だった子どもの患者数(予防接種を除く)は、震災直後に30人弱に減少した後、4月から7月の夏休み前まで60~70人程度の日が続いてきた。夏休みに入ってからは、例年の2割減に当たる30~40人台に減少している」(菊池信太郎副院長:右写真)。

子どもの患者が減っているのは、郡山市内の子どもの人口そのものが減少しているためだ。郡山市教育委員会によれば、7月20日時点で、震災を理由とした転出は小中学生合わせて720人(全小中学生数は3万人弱)に達している。
 
 市教委によれば、「地震で家に住めなくなった」という理由のほか、「放射能が心配なことによる一時避難」が理由として挙げられている。

さらに減少率が大きいのが幼稚園児で、郡山市私立幼稚園協会の調べによれば、7月1日時点で休園児と退園児合計で670人(7月1日の幼児数は5679人)に達している。



■放射線量が高いことを警告する公園の看板(郡山市の荒池西公園)


 菊池副院長は来院患者の減少の状況から、「夏休みに入って転居する子育て家庭がさらに増えているのではないか」と懸念している。
 
 その一方で、市内在住の子どもは外遊びすらままならない。菊池氏は「子どもの発達を考えると外で遊べないことは重大な問題。自然に近づくことすらできないという現状は極めて異常だ」と指摘する。

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