日本株はギリシャ問題深刻化でどうなるか ギリシャ二転三転で近づくデフォルト

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すなわち、足元の米国株式市況の堅調さは、中間反落といういわば「必要な痛み」を乗り越えてしまったのではなく、その手前に戻ってしまったということである。したがって、現時点まで金利が低いからこそ許されていた高いPER(株価収益率)の「ツケ」を、これから本格的に支払わなければならない。

通常は、金利上昇は米ドル高要因であるが、金利上昇により米国株価が大きく下落すれば、米ドルを押し下げる方向で働きうる。米株安と米ドル安の同時進行が懸念される。

日本株についてのこれからの「2つの投資戦略」

もし米株安とドル安が同時進行すれば、国内株式市場においては、円高の進行によって、輸出国際優良株が多く含まれる、大型株の不振が見込まれる。米国株価の下落により外国人短期筋が、リスク回避型の投資行動を推し進め、日本株にも売りを出そう。そうした外国人短期筋は、主として大型株を投資対象としているため、この点でも当面は大型株が劣位となりそうだ。

一方、年金など外国人長期筋は、個々の日本企業の収益改善傾向に着目し、個別に利益増を達成しそうな銘柄を丹念に発掘している。そうした利益の変化率が高い企業は中小型株に多く、外国人長期筋の地道な買いが、中小型株の株価を支えそうだ。

したがって、米国発の波乱要因でこれから当面国内株価が調整色を強める局面を、乗り切ろうというのであれば、以下の2つの戦略のどちらかをとるのが有効かもしれない。すなわち個別に有望な中小型株に投資するスタンスをとるか、あるいは、今は投資を手控え、全体相場の下落を待ち、株価が下がった後、大きく調整した大型株を押し目買いし、中長期的な株価の再上昇を狙う、という手法である。

さて、29日以降の全体相場については、引き続き、短期警戒(夏場は株価下落)、長期楽観(その後、年末から2016年に向けて株価上昇)の展望を維持する。そのなかで今週(29日(月)~7月3日(金))の日経平均株価は、2万0200円~2万0950円を予想する。

仮にギリシャ情勢が想定外に急転打開され、短期的な株価上振れがあったとしても、結局はその後は前述したように、米国のマーケットが意識され、徐々に下落基調に入っていくと見込むからだ。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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