「超人気つけ麺店」店主が日本を離れる切実な理由 "食べログ3.9"の名店を営むも「ずっと不安」だった

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上野さんは、創業当時から差別化やブルーオーシャン戦略をしっかり練っている。味だけでなく見せ方、世界観などすべて抜かりなく考え、それを成功に結び付けてきた。

ラーメンの知識や技術はもちろんのこと、経営的意識が強く、修業先のラーメンともガラッと変えた味でラーメンファンを唸らせた。

海外進出の理由は?

ここからが本題である海外進出の話だ。順風満帆かと思える上野さんがなぜ海外に拠点を移すのか。

「日本でずっとやっていて大丈夫かというのはお店を始めてからずっと考えていたことです。海外はラーメンの価格も人件費も上がり続けているのに、日本はこのままで大丈夫かとずっと不安でした」(上野さん)

上野さんはもともと海外志向で、日本の経済が心配だったため、海外に拠点があるといいなという考えは前からあったという。

昨年、旅行でオランダとドイツに行った時に、オランダに進出することに決めたという。オランダはまだラーメン屋がそれほど多いエリアではなく、現地の食文化や好みを理解したうえで日本の本格的なラーメンを出せば一番になれると確信した。5月にはオランダに行く予定だ。

「東南アジアやアメリカなどはすでにラーメン店含め日本の飲食企業が多く、後追いになってしまうので、先進国でありながらそこまでラーメン文化が発達していない地域を考えると、ヨーロッパが良いと思っています。

オランダのラーメン店は味的にはまだまだのところが多く、英語も通じるし治安も良いので、進出するにはぴったりのエリアかなと考えています。日本人がビザを取りやすいというのも大きな理由です」(上野さん)

上野さんは現地のラーメン屋でまずは働いてみて、英語を勉強しながら現地の味を学び、感覚をつかみたいという。その後、自分のお店をやるとしたら得意な豚骨ラーメンで勝負することは決めている。

日本の「ひら井」はそのまま残し、現メンバーに任せて、従業員の修業の場として機能させたいと考えている。

「ラーメンでなければ海外進出は考えていなかったと思います。日本のラーメンは世界で勝負できるジャンル。歳をとったらなかなか動けないだろうと思うので、動けるうちに自分の力を試したいなと。

海外で勝負できる武器を持っているのに戦わないのはもったいないという気持ちが一番大きかったです」(上野さん)

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