「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間

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さらに、違うアプローチとして「北朝鮮が自衛のために必要なある程度の核保有を認め、それ以上の核能力は検証可能な廃棄、そして開発中止を求めるべきだ」と、ゲーツ氏は促しています。

しかし、東北アジアにいるわれわれにとっては、北の核保有を一部でも認めると、隣国でも核保有論が強まり、核開発ドミノのリスクが高まるという事態にまで発展する危険性が高まります。

「もしトラ」が現実のものとなり、金正恩氏との交渉が再開したとすれば、最悪のシナリオは北朝鮮を核保有国として認定すること、そして朝鮮戦争の終戦宣言を行って在韓米軍の削減・撤退へと続くこと、アメリカにまで攻撃可能な北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)だけが禁止されるといったカードが切られ、安易な決着が図られることが懸念されます。 

脆い日米韓の三角関係

一方、日米韓の3カ国はこの2年間ほどで関係が強化されました。バイデン氏、岸田文雄氏、尹錫悦氏らが握手している写真が世界のメディアを飾ることもありました。しかし、3人とも自国での支持率はけっして高くありません。

さらに、2024年4月には韓国で総選挙が行われます。日本でも9月に自民党総裁選、11月にはアメリカ大統領選挙が控えています。

韓国では現在、この総選挙、ひいては3年後の大統領選をにらみ、政界再編が進行中です。日本の岸田政権も、「内閣支持率と与党の支持率の和が50%を切ると、首相は退陣する」という自民党の故・青木幹雄議員による「青木の法則」に近づいています。

アメリカでは政治・社会の両極化が広がっています。この1、2年以内に、3人のうち誰かの顔ぶれが変わってもおかしくはない状態です。

韓国の尹大統領は、2024年3月1日に行った演説の中で、日本を「パートナー」と呼びました。そして日韓国交正常化から60年、第2次世界大戦終結から80年となる2025年という節目の年に、「一段階飛躍させた」新たな日韓共同宣言を発したいと呼びかけました。

これに先立ち、尹氏の外交ブレーンである韓国国立外交院の朴喆煕院長は、日本メディアに対し、1998年に当時の小渕恵三首相と金大中大統領との間で発表された「日韓パートナーシップ宣言をステップアップさせた新しいビジョン」を目指すと発言しました。

これに対し、「朴氏の言葉からは韓国側の焦りがにじむ。尹政権を孤立させず、日本側からも十分な支援をしてほしいと訴えているのだ」とこの日本メディアは解説していました。

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