「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間

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翌2019年2月、ベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、さらに大きなリスクをはらむものでした。

当時、韓国の文在寅大統領やその一部支持層の強い希望もあり、朝鮮戦争の「終戦宣言」が取引の材料に上がっていました。停戦状態にある朝鮮戦争による不安定な状態を「終戦」させることは、一見、よい展開に見えます。

しかし、いったん「終戦宣言」が安易に合意されると、在韓米軍の存在理由が弱まります。すると、次は在韓米軍の削減、もしくは撤退に追い込まれる確率が高まってしまいます。

在韓米軍という地政学的重要性

在韓米軍という強力な軍隊がいなくなれば、韓国に対して実力行使をする誘惑を北朝鮮に与える可能性があります。例えば、経済的に苦しい北朝鮮は韓国にある半導体工場などを手中に入れたいと考えるとしても、なんら不思議なことではありません。

実際、韓国にあまり好意的ではなかったと思える安倍氏もトランプ氏に「在韓米軍を撤退させてもらっては困る」と主張したことが回顧録に出ています。

トランプ氏は大統領就任中、金正恩氏と3回会いました。そのたびにトランプ氏の周辺からは、たとえばアメリカ政府関係者や外国首脳からの忠告や牽制の言葉が絶えませんでした。

アメリカのジャーナリストであるボブ・ウッドワード氏やトランプ政権では大統領府安保補佐官だったジョン・ボルトン氏によれば、トランプ氏の側近らは、次のように忠告していました。

ミサイルの早期探知やアメリカ軍が前方展開するという戦略的重要性を主張しました。しかも、在韓米軍が駐屯する韓国中部・平澤(ピョンテク)基地は、海外における米軍基地の中で大規模であり、GDPの2.5%を軍事費として支出しているにもかかわらず、トランプ氏が韓国の防衛負担を過小評価する傾向がありました。

同時に、このような事実を大統領府スタッフや国防長官がトランプ氏に対し、懸命に事実を理解してもらおうとする苦労が描かれています。
それにもかかわらず、トランプ氏は「われわれアメリカは、韓国の生存を許しているんだ」「なぜわれわれは韓国の味方をしないといけないのか」と一歩も引かない姿勢を示していました。

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