「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間

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一方、経済安保や半導体産業の観点からすれば、台湾の半導体ファウンドリー企業・TSMCがしきりに話題になっていますが、サムスン電子やSKハイニックスなども人工知能(AI)に不可欠なメモリー半導体を製造しています。

それらの韓国における生産拠点に危機が近づけば、日本のメモリー需要に関わるサプライ・チェーンが大混乱することは明白です。ちなみにこの2社だけで、DRAMにおける世界シェアは7割を超えています。

即興的なディールの危うさ

2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙で、共和党候補としてトランプ氏が確実視され、「もしもトランプが再び政権をとったなら」という「もしトラ」という言葉が聞かれるようになりました。この「もしトラ」で少し考えてみましょう。

前政権時のように再び、トランプ氏と金正恩氏の首脳会談が行われると想定し、次はどのような会談になりそうか。1期目当時の2回の首脳会談の交渉過程から考えてみましょう。

まずトランプ氏は、相手への信頼関係よりも取引を優先するディール・メーカーという姿勢を示します。これについて、故・安倍晋三元首相は次のように回顧しています。 

〈トランプが「金正恩と会う」と明言したので、すぐにトランプと電話で会談しましたが、トランプの頭の中は、すでにディール・モードになっていました……(彼は)根がビジネスマンですからお金の勘定で外交・安全保障を考えるわけです。例えば、”米韓合同軍事演習には莫大なお金がかかっている。もったいない。やめてしまえ”、と言うわけです〉
(安倍晋三著、橋本五郎ほか聞き手『安倍晋三回顧録』中央公論新社、2023年)

最近の候補者指名争い期間中も、トランプ氏は「ウクライナ有事を24時間で決着してみせる」と豪語しています。確かに安易な譲歩をすれば、早く終わるでしょう。しかも、トランプ氏は即興的に譲歩に踏み切る傾向があります。

実際に2018年、シンガポールでの初の米朝首脳会談では、米韓合同軍事演習を中断させるというサプライズが飛び出しました。

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