伸びる子に共通する「間違い」に対する思考のクセ なぜ「できなかった問題」が「宝問題」になるのか

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そもそも、子どもたちはなぜ間違えることを嫌悪するようになったのでしょうか。

筆者の経験では、テストが始まる小1からすでにそれが始まっていると考えています。テストでは◯と×がつけられます。そのとき、親も先生も、◯が多いとニコニコし、×が多いと眉間にシワを寄せたり、機嫌が悪くなったりします。それをたびたび繰り返すうちに、子どもは◯は良いこと、×は悪いことと認識するのではないかと思っています。点数が高い子は良い子、点数が低い子は悪い子という誤った認識の刷り込みがされていくのもこの時期からです。

間違いに対する認識の書き換え作業をしていく

このようにして◯が良いこと、×は悪いことであると思ってきた子どもたちの認識を変えることはそう簡単ではありませんが、これまで筆者が指導してきた方法が参考になるかもしれませんので、紹介します。

まず、子どもの年齢によって対応が大きく2つに分かれます。個人差があるため明確に年齢で分けることは厳密には難しいですが、中学生以降と小学生までという括りで説明していきます。

【中学生以降対象(中学受験する小学生も含む)】

中学生には、間違いや失敗に対する認識の書き換え作業をしていきます。具体的には次のような話をします。

学校や塾で先生に当てられて、答えたときに「違う!」と言われたら、どんな気持ちかな? 「やばい」「もう答えたくない」っていう気持ちにならない?
「間違えること、失敗すること=良くないこと」って、これまで思ってきたんじゃないかな。実はね、世の中の多くの人たちもそう思っている。だって、そのように育てられてきたから。でも、それこそが違っていて「『間違い=悪いこと』と考えること自体が間違い」なんだ。
実は「間違いや失敗=宝」と考えた人が伸びている人なんだよね。でも、そのように考えることができる人は少ない。だから一部の子しか勉強しても伸びていかないんだよ。割合でいえば、全体の5%程度かな。学校の成績で言えば、「5」を取る割合ぐらい。
勉強で言えば、間違いを正したいときに頭が良くなっているということはわかるかな。逆に言えば、間違いがなければいつまでも頭は良くならないということだね。
それを「間違いは良くない!」とか、「失敗するな!」とか、さも間違いや失敗が悪いことであるように、大人たちが言うから、子どもたちもそうだと思ってしまう。もちろん、わざと間違いや失敗をする必要はないんだよ。でも、もし間違いや失敗があったらラッキーと思ってみて。なぜなら、成長するチャンスがやってきたということだから。
例えば、10問の問題があってそのうち半分しかできなかったとしよう。“半分も間違えた“と思うかもしれないけど、そうではない。間違えた5問分の説明を聞いてわかったら、その瞬間に5問分頭が良くなっているわけだ。もし10問とも正解してしまったら、何も学べていないよね。
もちろん入学試験や定期試験では◯が多いほうがいい。でも、日頃勉強している内容は間違いが多いほうが、学べて、成長できて、頭が良くなっていくと思わない?
よくこんな話をするんだ。「できた問題はクズ問題で、できなかった問題が宝問題だ」と。できた問題は成長に繋がらない問題、できなかった問題は成長に繋がる問題だからね。しかも、3回解いても間違えた問題は今後も出る確率が高い問題だから、それがわかったということだけでも超ラッキーだよね。
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