ちなみに、アイリサーチが20代の会社員200人に調査した「ストレスを感じる上司の言葉」の第1位は、「なんでできないの?」でした。その「なんで」が厄介な問題だからこそ、現実逃避をしたり、問題の先送りをしたりする人が少なくないのでしょう。
2つのリーグが歩み寄れなかったのは、既得権益やお互いのメンツなどを大事にするあまり、日本バスケットボール界が目指すべき未来について考えることさえ、先送りをし続けたという結果ではないでしょうか。
アンガーマネジメントの怒り方・叱り方の基本は、ソリューション・フォーカス・アプローチ。つまり、「未来志向・解決志向」でどう感情をコントロールし、意思決定するかを選択します。決して「なんで」という「原因志向」で捉えることをしません。
川淵チェアマンの意思決定には、「日本バスケ界の未来のため」という基本コンセプトが色濃く反映されており、まさに未来志向、解決志向。「どうしたら」制裁解除を取りつけられるのかだけを考え、具体的取り組みを講じて来られたのだと感じます。
「高い壁」にも現実的対応策を提示
皆さんご存知のことでしょうが、川淵氏は現在の日本サッカー協会の最高顧問です。Jリーグの設立を主導し、初代チェアマンとしてリーグ運営を成功に導き、「背広組」のトップとして1990年代の日本サッカー躍進を成功させた功労者の一人です。
その川淵氏が今回振るった大ナタは、これまでの日本バスケットボール界にはなかった発想のものでした。たとえば、①プロ選手契約が原則(一部例外も)、②ホームアリーナの収容人員は5000人程度を確保、③チームの年俸総額制限を廃止、④健全な財務体質の確立……などです。
これら、バスケットボール界にとっては「高い壁」と言えるような問題について、川淵氏は迅速かつ現実的対応策を示したのでした。
まず①に関しては、たとえば東芝(ブレイブサンダース)の選手が全員社員なので、その身分をプロに変えられるのか?という問題が浮上しましたが、「現役を終えたときに東芝の正規社員として仕事ができるという身分を保証すればいいでしょう、言ってみたらセカンドキャリアだから」と、選手を大切にする柔軟な提案をしました。
②の問題、たとえば秋田県内に5000人収容のアリーナがないことについては、「仮設席や立ち見席のような融通を利かせていただくことをダメとは言いません。秋田ほどバスケットの人気がある地域はなくて、日本一になる可能性がある。将来は1万人ぐらいのアリーナがあって、試合があれば切符が完売するくらいのチームになってほしい、その途中過程として『立ち見はけしからん』と言うつもりはありません」と、地方創生にもつながる夢を掲げます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら