「半導体のプロ」坂本幸雄氏はなぜ中国に賭けたか 「いずれ中国のIC微細化は限界迎える」と予見

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2月14日に亡くなった坂本幸雄氏は、エルピーダメモリの破綻後は中国企業に活動の場を求めた(写真:尾形文繁)

日本の半導体業界では珍しい「プロ経営者」だった坂本幸雄氏が2月14日に死去した。日本テキサス・インスツルメンツ(TI)副社長などを経て、エルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)を一時的とはいえメモリーの世界大手に導いた手腕は広く知られている。

2012年にエルピーダが経営破綻した後は表舞台から遠ざかったが、死去するまで中国の半導体メーカーで経営者としての復権を目指していた。

「日本企業が日本メディアの報道をうのみにして、中国との交流を避けるのはよくない」。坂本氏は2023年7月、深圳市昇維旭技術(スウェイシュア)最高戦略責任者(CSO)の肩書で、筆者が勤務する桜美林大学で講演した。同社はメモリーの一種であるDRAMへの参入を目指す中国の国有企業で、坂本氏は2022年6月に入社していた。

坂本氏は取材や講演で持論を述べるのが好きだったが、スウェイシュアへの入社以降は控えていた。中国のハイテク産業を警戒する日本の世論を意識していたようだ。しかし、前職の記者時代から20年以上の交流がある筆者が依頼すると、「学生さんが相手なら」と快諾してもらった。

結局は当日、メディア批判を含めて以前と変わらぬ毒舌ぶりを発揮し、筆者は苦笑してしまった。キャンパス前でタクシーに乗る姿を見送ったのが最後になるとは思いもしなかった。

「負け犬のままでは終われない」

坂本氏がエルピーダを離れた後、中国企業に活動の場を求めたことは本人が時折、取材に応じて明らかにしていた。ただし、それは顧問や社外取締役としての側面支援というレベルではない。

本人は常々、「負け犬のままでは終われない」と語り、あくまで現役の経営者として復権することを真剣に考え、実行していた。近年は休日には剣道に打ち込んでいたが、これも経営者として戦える健康づくりが大きな目的だった。

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