EガーディアンがチェンジHDと組んだ真の狙い 業界再編で、セキュリティー国産化を進めたい

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イー・ガーディアン 社長 高谷康久氏
高谷康久(たかたに・やすひさ)/イー・ガーディアン社長。1968年生まれ。ジョンソン・エンド・ジョンソン、京セラなどを経て、2005年にイー・ガーディアン入社。2006年から現職(撮影:尾形文繁)
東証プライム市場上場のイー・ガーディアン(以下Eガーディアン)。SNSや動画投稿サイトの投稿監視を請け負い、24時間365日体制で人間の目を用いて監視し、件数に応じた手数料を受け取る事業が中核だ。
同社は豊富な現金を使ってセキュリティー企業のM&Aを進めてきたが、2023年10月、ふるさと納税プラットフォームなどを手がけるチェンジホールディングス(HD)の傘下に入った。
なぜ上場子会社になる道を選んだのか。今後の成長戦略をどのように描いているのか。高谷康久社長に聞いた。

──サイバーセキュリティー事業の拡大を進めています。

僕がこの会社に加わったのは2005年、社員が十数人の頃だ。初代iPhoneが発売される2年前だったが、すでに携帯電話事業者が運営する公式掲示板が存在し、犯罪をにおわす投稿や画像を使った電話番号のやり取りなど、人の目で投稿内容を監視する必要があった。事件・事故を未然に防ぐインターネットの守護神になろうと、社名をEガーディアンにした。

Eガーディアンは掲示板の投稿監視からスタートしたが、それだけで終わらせたくなかった。そこで経営理念を、すべてのインターネット利用者に安心・安全を提供するという「We Guard All」にした。

というのも、当時から「サーバーが攻撃を受けた」「脆弱性が見つかったがどうしたらよいか」といった相談があり、徐々に増えていた。セキュリティーのことはよくわからなかったため、京セラ時代の同僚で、セキュリティーエンジニアとして有名な徳丸浩が独立したので彼に仕事を依頼していた。

あまりにも多く相談が来るので2015年に徳丸の会社を買収(現EGセキュアソリューションズ)し、一緒にやっていくことにした。これがセキュリティーに関わり始めたきっかけだ。

いま日本で使われるセキュリティー製品は、ほとんどがアメリカ製だ。輸入品に頼るとエンジニアも市場も育たない。警察や消防のようにリアルなものは国が手がけるのに、なぜセキュリティーは海外任せなのか。

日本のデジタル赤字(注:デジタル関連の国際収支の赤字のこと。日本から海外へのITサービスや製品の支払い超過を意味する)は年間6兆円近い。未来を考えると自治体や国などのセキュリティー製品は国産であったほうがいい。

そのために事業を成長させ、M&Aも行ってきたが、多少借り入れを行っても、手持ちの現金だけで次々と会社を買い続けられるわけではない。残念ながら、われわれ単独で進めるスピードは遅いというのが現状だ。

普通ならびっくりするような提案

──そしてセキュリティー業界再編のため、昨年10月、「ふるさとチョイス」などを展開するチェンジHDの上場子会社になりました。

そんなことを考えているときに、チェンジHDの福留大士社長から声をかけられた。

最初は、「ふるさと納税の会社がなぜセキュリティーに興味を持つのか」と感じた。話をよく聞くとチェンジHDは、これまでの日本の価値観をチェンジし、問題を解決することを目的としている会社であり、福留社長が、ふるさと納税と同じように日本のセキュリティーをどうにかしたいと考えていたことがわかった。

僕たち自身が必死に買収先や組む相手を探している中、福留社長もどこと組むのか、組んだらどんな可能性があるのか、探していたそうだ。

そして福留社長から「(チェンジHDが)株式を半分持つから、連結子会社として一緒にやろうよ」という、普通ならびっくりするような提案をしてきた。

それを聞いた瞬間、僕のやりたいことを本気で実現しようと思っている人がいると感じ、何の迷いもなく、一緒にやろうと決めた。

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