EガーディアンがチェンジHDと組んだ真の狙い 業界再編で、セキュリティー国産化を進めたい

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──チェンジHDはセキュリティー事業の実績がありません。同業他社と組むほうが、相乗効果は大きいのではないでしょうか。

チェンジのような、若くて優れた人たちと組むほうが刺激になる。福留社長を含め、経営陣はアクセンチュアの同期入社。役員同士がフラットに意見を言い合う、いい空気感だ。

チェンジもコンサルティングはやっているが、部隊がいないからBPO(業務のアウトソーシング)はやっていなかった。

今、アクセンチュアはコンサルにBPOを組み合わせて成長している。今後はわれわれが、新たなビジネスとしてコンサル後の業務効率化やセキュリティーサービスを担うことで、既存事業でもシナジーを出せるかもしれない。

売上100億円まで10年以上かかった

――高谷社長は創業者ではありませんが、2006年に社長に就任して以降、Eガーディアンを着実に成長させ、上場を果たしました。なぜ、別の上場企業の傘下に入るという決断をしたのでしょうか。

2010年に上場したとき、売上高は13億円だった。そのときのある取材で「売上高100億円はすぐに達成できる」と答えたが、結局100億円を超えたのは2022年のことで、10年以上かかった。

「未来はバラ色だ」「短期で成長できる」と語るのは簡単だが、僕のやり方では正直に言ってこの程度だ。もっと優れた経営者は絶対にいるし、いいやり方もあるはずだ。だから1人でやるのではなく、一緒に悩んで苦しめる仲間作りをしたいと思っている。

新経済連盟の監査役をやっているのもそういう理由だ。楽天グループの三木谷浩史さん、サイバーエージェントの藤田晋さんといった経営者と一緒に仕事をしながら、何をどう考えて仕事をしているかを知ると刺激になる。

今回、チェンジHDと一緒にやろうと決めたのも同じ理由だ。

――資本が入り、子会社になるということは、“親子”として上下関係ができるのでは?

上下関係があってもいい。そして、僕が役に立たなければ「ちょっと代わってよ」と言ってもらって構わない。いい経営者や経営陣が会社を引っ張ることが会社のためになる。

──セキュリティー業界の再編をどう進めますか。

いちばん大事なことは、仲間集めのための価値観だ。国産の製品やサービスでセキュリティーをしっかりやろうという目的に賛同してくれる会社であれば、チームに入ってほしい。

そして、必要があれば資本から経営、マーケティング、送客までを支援したい。

海外では、セキュリティーエンジニアはとても尊敬されており、高収入の代表のような仕事になっている。日本も何年かかるかわからないが、絶対にそういう世界になっていくだろう。

なるべく早く、数千人のエンジニアが活躍し、みんながあこがれるような、「日本のセキュリティーと言えばここだよね」という会社になりたい。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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