テイラー・スウィフトに「陰謀論」が付きまとうワケ トランプ支持者からのレッテルが大統領選を揺るがす

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ワターズ氏いわく、「2019年に開催されたNATO(北大西洋条約機構)の会議で、アメリカ国防総省はテイラー・スウィフトをPSYOP(心理作戦)に活用することを提案した。彼女の歌がこれほど人気を博している裏には、何らかの悪だくみがある」とのこと。

そして番組は、アメリカの研究者がスウィフトさんを事例にして情報の広がり方に関する研究成果をそのNATOでの会議で発表した映像を流した。ワターズ氏の主張を裏づけるかのように。

わが意を得たりと言わんばかりのワターズ氏は、元FBI(連邦捜査局)高官との掛け合いで、「大統領選で『バイデンに投票しろ』と若者たちを洗脳するツールとしてテイラー・スウィフトが使われる可能性」について大いに語り合ったのだった。

国防総省のエージェント!?

とはいえ、この映像はひどく恣意的に編集されていた。ノーカット版の発表はYouTubeでも視聴できるが、くだんの研究者は単に「情報がSNSを通じてどう伝わるか」の一例としてスウィフトさんが「選挙の投票に行こう」と呼びかけたことの影響力を検証しただけであった。

「アメリカではセレブが投票所に行くよう呼びかけることは珍しくない」とも説明していて、スウィフトさんを「心理作戦に活用すべき」などとは一言も述べていない。そもそも、研究者とアメリカ国防総省とのつながりもなかった。

このFOXニュースの放送が物議を醸したのを受けて、国防総省の報道官は“Shake It Off(邦題は「シェイク・イット・オフ~気にしてなんかいられない ‼」)”という彼女のヒット曲のタイトルを引用しながら一蹴した。

そう、「気にしてなんかいられない ‼」ほど根拠のない陰謀論だったのだ。そもそも、なぜMAGAが国防総省を敵視するのかもよくわからない。

だが、というべきか、案の定、というべきか、「テイラー・スウィフトは国防総省の秘密エージェントに違いない」と固く信じるトランプ/共和党支持者たちは少なくない。

ちなみに、FOXニュースは前回の大統領選で「投票の集計機に不正があった」とするトランプ陣営の陰謀論を繰り返し放送し、集計機メーカーから名誉棄損で訴訟を起こされた。

2023年にFOXニュースが約1055億円をメーカーに支払うことで和解が成立している。高い授業料を払ったわりに、学びは多くなかったようだ。

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