恐怖すら感じる「トランプの選挙集会」のリアル 若者=民主党支持の構図は完全に崩壊している

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集会は、全員が着席する形式だった。トランプ氏が到着する前に、若い人からコメントを取ろうと思ったが、動き回ると選対のボランティアや警備に「通路や階段で止まるな」と注意されるため、着席して待った。

大学生と思われる男性4人の隣に座り、話を聞こうかと思ったが、過去の経験から思いとどまった。トランプ氏が演説を始め、「フェイク・ニュース!メディアは、人々の敵だ!」と批判すると、一斉にブーイングが起こり、会場中心部にある鉄柵で囲まれたメディアプールに中指を突き立てたり、スマホで撮影したりするのを記憶していたためだ。

判断は間違っていなかった。トランプ氏を待つ間、会場でウエーブが起きた。歓声を上げながら両腕を上げる隣の男性が「おい、プレス!」と2度叫んだ。ウエーブに参加しないことをなじっているのだ。記者だと名乗っていなくてよかった。ノートもバッグにしまった。

トランプ演説は確実にパワーアップ

午後7時過ぎ、ビヨンセでも来たのかと思うほどの大歓声の中、トランプ氏がステージ上手から笑みを浮かべて登場する。いつものように、ダンスをしているかのように手足をロボットのようにカクカクと動かす。歓声と笑い声で、大音響の音楽がかき消える。老いも若きもステージに背を向けてセルフィーを何枚も撮る。若い女性が連れと肩を抱き合ってジャンプし、「I love you!」と叫んでいる。

トランプ氏の演説はなんと2時間ちかく続いた。私が聞いた過去4回の大統領候補の選挙取材で、最長だ。しかも、2016年、2020年に比べて、かなりグレードアップしていた。トランプ氏は2016年当時、プロンプターを使わず、内ポケットから折り畳んだ紙を出して読んでいた。珍しく黒人の支持者がほとんどという郊外の集会で「教育現場でマジョリティ(白人)が優先されるようにする」と原稿を読み上げ、支持者の人種を見て「即興演説」さえできないでいる惨めな姿も目撃した。

しかし、2020年と今回の集会では、板ガラスのプロンプターを使っていた。しかも今回は、彼の後ろに大画面でパワーポイントを映し出していた。同州でトランプ氏を追い上げていた共和党のライバル候補、ニッキー・ヘイリー元国連代表大使を批判するスライドが続く。

「ヘイリーは、民主党員、ウォール・ストリート、グローバリストに愛されている」
「ヘイリーは、国境の壁を支持していない」
「ヘイリーは、エスタブリッシュメントに愛されている」
「ヘイリーは、65歳は定年には低すぎると発言した」

トランプ氏を脅かすヘイリー氏を、トランプファンが毛嫌いする民主党、金融街、グローバリスト、エスタブリッシュメントと結びつけ、ダメージを与えるスライドだ。

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