意外と知らない「推し」と「萌え」決定的な違い 情報革命でファンの在り方は大きく変わった

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売り上げや視聴率と違って、リツイートやシェアはどれだけみんなに読まれたのか、どれだけみんなに広まったのかが眼の前で可視化されるので、「推し」を推す手ごたえをその場で体感するのにも優れていました。

推し活には「つながり」がある

1人で推すしかなかった人も大勢と一緒に推せるようになり、今までは試合会場や映画館に通うか、CDやグッズを買うしかなかった推し活に新しい選択肢を与えてくれたのがインターネットによる情報革命、なかでもリツイートやシェアといったSNSの共有機能なのです。

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映画を観て感動した、だけどそれをメッセージにするすべのない人も、過疎地に暮らしていて周囲にファン仲間がいない人も、リツイートやシェアをとおしていつでも推し活に参加でき、他のファンと繋がり合えるようになったわけですから、ファン活動のまさに革命だったというほかありません。

こうして推し活は以前よりも多人数が集まりやすく、手軽になり、あらゆるジャンルで大規模に行われるようになりました。リツイートやシェアをとおして生まれたバズは数値化されているので、マーケター側はその数値をもとに売り上げを予測することも、バズのフックを仕掛けてSNS映えさせ、売り上げを伸ばすこともできます。

SNSをとおして大きく広がった推し活は、こうしてコンテンツの送り手からも受け手からも歓迎され、急速に広がっていったのでした。

熊代 亨 精神科医・ブロガー

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くましろ とおる / Toru Kumashiro

1975年生まれ。信州大学医学部卒業。精神科医。ブログ『シロクマの屑籠』にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。通称“シロクマ先生”。著書に『ロスジェネ心理学』、『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(ともに花伝社)、『「若作りうつ」社会』(講談社現代新書)、『認められたい』(ヴィレッジブックス)、『「若者」をやめて、「大人」を始める』『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』『何者かになりたい』(イースト・プレス)がある。

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