意外と知らない「推し」と「萌え」決定的な違い 情報革命でファンの在り方は大きく変わった

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だから「推し」と「萌え」は、「好き」という気持ちは共通しても、その気持ちが第三者に対して開かれている度合いがぜんぜん違っていたのでした。

今日の推し活では「推しが『尊い』」という言い回しをよく見かけます。尊いというからには、「推し」の対象は「萌え」の対象に比べて距離があり、少なくとも「俺の嫁」と呼んだり一対一の関係を想像したりする筋合いのものではないのでしょう。

ですからひとことで好いているといっても、「俺の嫁」である「萌え」と「尊い」とされる「推し」の間には大きなギャップがあるとみてとるべきです。前者には、後者にあるはずの第三者の目線、その好きな対象を第三者と一緒に応援し、自分よりも尊いものとみなす感性が欠けていたのでした。

「萌え」時代は集団性より個人性

ざっくりまとめると、「推し」が流行する前のサブカルチャーの風景、あるいはインターネットのカルチャーは、全般的に自分中心で独りよがりと言いますか、集団性より個人性が前面に出たものだったと言えます。

SNSのトレンドは自分中心の「いいね」で、キャラクターと自分自身との関係性も一対一の時代、「推し」を他の推し活メンバーと一緒に尊ぶ感性ではなかったのでした。承認欲求を充たすことに夢中になりがちな感性、「いいね」をつけてくれる人や自分の好きなキャラクターに好かれたい・愛されたいと願うことに夢中の感性でもあったと言い換えられるかもしれません。

2011年に東日本大震災が起こった時、SNSは新しいメディアとして注目され、より多くの人がTwitterやFacebookなどを使い始めました。そのとき重視されたのは「いいね」ではありません。

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