2024年、不動産関連"知っておきたい"法改正5つ 業界に大きな影響を及ぼすルール変更が多数

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【2位】「タワマン節税」の改正

新たな税制改正により、相続税や固定資産税などへの税金対策として、タワーマンション(タワマン)を所有する、いわゆる「タワマン節税」が難しくなる。

そもそも「タワマン節税」とは、相続税の対象となる相続税評価額と実際の購入価額(時価)の開きが大きいことを利用したものだ。

これまでは高層階ほど市場価値が高いことが反映されず、低層階と高層階でも共有持ち分であれば相続税額は変わらなかった。しかし今回の改正では、高層階ほど税額が上がっていく形となる。

評価額算定を新たにし、およそ市場価格の4割とされる評価額を戸建てと同じく6割程度まで引き上げることになる。

なお、この改正の影響を受けるのは「タワマン」に限らない。実質的には「タワマン」以外のマンションでも評価額が引き上げられるためだ。

資産性のある立地のマンションを購入する際の新たなチェックポイントとして留意する必要がある。

建設業界が抱える2024年問題とは

【1位】働き方改革関連法案の適用(2024年問題)

2024年、建設・不動産業界に最も大きな影響が及ぶと考えられるのが、働き方改革関連法案の施行だ。

少子高齢化で人材が不足する日本において、誰もが活躍できる社会の実現や長時間労働の解消に向け、残業時間の上限規制や有給休暇の取得など多彩な「働き方」を選べるよう見直しが行われた。

すでに2019年より施行されている法律だが、建設業や運送業などでは「残業上限規制」について5年の猶予が設定されている状態だった。しかし、ついに2024年、原則「1カ月で45時間、1年で360時間以内」という形で、時間外労働上限が厳しく規制されることとなる。

これから家を購入する場合、これまでのような土曜日の現場稼働はなくなる。つまり住宅を建てるにあたり、工期が大幅に延びるケースが予想されるのだ。

資材や設備などあらゆるものが高騰する中、これまで以上にコストがかかり、なおかつ工期が延びる。またマンションの場合、大規模修繕工事のスケジュールにも影響が及ぶことになる。

短期的な視点で見ると2024年は現場の混乱が予想される。しかしながら長時間労働が慢性化し、厳しい職業として敬遠されてきた建設業のイメージが一変する意味では大きなメリットとも言える。

優秀な人材が入ってくることにより、業界全体の活性化にもつながるはずだ。コストアップに応じたクオリティーの向上も期待できる。

長期的には建設業界が抱えてきた課題の解消につながり、大きく飛躍するための法改正と見ることもできる。

いずれにせよ今回ご紹介した法改正を念頭におきつつ、2024年のルール変更が自分たちにどのような影響を及ぼすのか、どのような対応が必要なのか再考をおすすめする。

そのうえで不動産の購入や保有、売却のタイミングは「今」なのかを見極めてほしい。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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