OpenAI騒動、結局マイクロソフトが一番得した訳 自社の開発者を迎え入れるより理想的な展開

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OpenAIの開発チームを構成する大多数の幹部や研究者にとっての目的は、すべての人類に等しくAGIを提供することであって、商業利用の推進はそれを果たすための手段でしかない(それゆえに完成したAGIは、どんな大株主に対してもライセンスされない)。

営利を求めないことが、根源にあるコンセプトを実現するために必要なことであるにもかかわらず、営利を求めなければ実現にはたどり着けない。この「捻れ構造」を受け入れたのがマイクロソフトだった。

マイクロソフトが「求めている」ものは何か

ではなぜマイクロソフトは、それを受け入れたのか。

マイクロソフトが求めているのは、おそらくOpenAIが生み出すAGIそのものではなく、OpenAIがAGIを求めて技術開発を進めていく過程で生み出す技術の、自社製品、サービスへの応用だからだ。

OpenAIが掲げている理想が実現、すなわち、すべての人類にAGIが平等に提供されるようになった場合、世の中のビジネスモデル、社会的な構造は大きく変化し、国家間のパワーバランスなども変わるかもしれない。

そうした予測できない社会での成果物ではなく、AGIに近づく中で生まれる有益な技術を実用的な道具として取り入れることのほうがマイクロソフトにとっては理にかなっている。

そして、その目的を果たすためには、OpenAI開発チームが持つパフォーマンスを最大限に引き出せる環境を与えることが望ましい。マイクロソフトにとって、OpenAIの開発チームが元鞘に収まることは、自社に取り込むよりもずっと好ましいことなのだ。

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本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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