ベンチャー「調達環境の急悪化」を乗り切る条件 麻生台ヒルズの新VC拠点は起爆剤になるか

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2022年度第2次補正予算では、関連の施策について過去最大の1兆円規模の予算を計上。2023年に閣議決定された税制改正大綱にも、スタートアップエコシステムの強化に向けた優遇策が盛り込まれた。支援策のスコープは創業期からIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)といったイグジット(出口)戦略を考える成熟期まで幅広い。政府はこれらを通じ、スタートアップへの投資額を2027年度には、従来比で10倍を超える年10兆円規模にすることを掲げる。

資金調達額の拡大にブレーキ

だが、足元のスタートアップマネーの動向に目を向けると、状況は芳しくない。

スタートアップ情報プラットフォーム・INITIAL(イニシャル)の調査によれば、国内スタートアップの資金調達総額は2022年上半期まで続いていた拡大にストップがかかっている。要因の1つは、海外投資家からの資金が激減したことだ。米国での金融引き締めを契機に、スタートアップへの投資判断は全世界的に厳格化。2023年の後半にかけても状況は好転していない。

とくに影響を受けているのが、組織や事業が軌道に乗りIPOも視野に入ってくるレイターステージの企業による調達だ。最有力の上場先である東証グロース市場が冴えない中では、投資家は十分なリターンを得る出口戦略を見いだしづらい。100億円を超える巨額の資金調達を実現している例は依然として存在するものの、一部の超有望企業に限られている。2024年以降、官民の支援がさらに充実しても、欧米におけるスタートアップ投資の回復や東証グロース市場の好転なしには、リスクマネーの本格的な拡大は望めないだろう。

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