『凛として時雨』TK流"才能がない"仕事の原動力 「完成しないからこそ、20年続けられた」

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そうして自分の求める理想の音楽はどんどん過激になっていく。ゆえに、「永遠に未完成のまま」とTKさんは続ける。

TKさん:未完成であることに美しさを感じながら、さらに上の段階の理想を追い求めて作り続ける。

それが僕にとって創作活動のエネルギーになっているのかもしれません。
(撮影/岡田貴之)

他人からはわからないほどのわずかな差であっても、究極まで理想を追い求める。その姿勢は、まさにプロフェッショナルそのものだ。

そう伝えると、「僕は自分をプロフェッショナルだとは思わないですけど……」と謙遜しつつ、こう話した。

TKさん究極まで自分を満足させられる結果を突き詰めるのが、プロとしての最低条件なんじゃないかと思います。

周りが作品を受け入れてくれるかどうかももちろん大切です。あり得ない話ですけど、もし意図的に世界的なヒットが生み出せるとしても、自分がそこに何の魅力も感じなければ僕の心はくすんでしまう気がしていて。
TKさん:自分の理想を超えられるか、それが誰かの想像を超えられるか、だけを考えています。

見方によっては自己満足かもしれないけど、自分が満足していないのに、誰かを満足させられるわけがないと思うんです。

その作品を通して、衝撃みたいなものを共有できたらいいなって。

「もう無理だ」と思った時に、仕事との相性が見える

理想を追い求める過程がエネルギーになるとはいえ、成果や手ごたえがないと心が折れそうになることもあるだろう。

TKさんもまた、その過程について「一生終わりが見えない過酷な精神状態」とエッセイ内で明かしている。

TKさん:もっと良い音楽を作りたいのに、なかなか生み出せない……そんな苦しさや悔しさが、僕自身の奥深くに“傷”として残っていくんです。

でも、そうした音楽での傷つきや苦しみを癒やせるのもまた音楽だけというか。

息抜きで旅行に行ったりおいしいものを食べたり、ほかの誰かに「良かったですよ」って褒められたりしても、その深い傷は癒やせないし、向き合うべき傷から逃げてるように感じてしまう。

だから自らを乗り越えるには、音楽に向き合い続けるしかないんです。それが唯一の救いなので。
(撮影/岡田貴之)
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