国内の造船大手、ブラジル事業で狂った目算 石油会社・ペトロブラスの汚職事件で激震
IHI、三菱重工業、川崎重工業、名村造船など、日本の重工・造船業界が揺れている。震源地は日本の真裏に位置するブラジル。同国の国営石油会社、ペトロブラスを巡る大規模な賄賂・汚職スキャンダルの影響により、日本勢が出資・事業参画している現地造船所が経営危機に見舞われているからだ。
ブラジルでは近年、「プレソルト」と呼ばれる超深海の巨大油田開発が本格化し、国家プロジェクトでペトロブラスが大規模な開発計画を進めている。開発にはドリルシップ(試掘・開発用の堀削船)など膨大な数の海洋構造物を使用するが、ブラジルは産業育成や雇用・経済対策として、そうした設備を自国企業へ優先的に発注する政策をとってきた。
技術協力の要請受け、日本勢が事業参画
その主要な受け皿となったのが、現地の大手建設会社が設立した複数の新興造船会社。しかし、掘削船などを受注したはいいが、建造に必要な造船の技術がブラジルにはない。そこで、ブラジル政府や各建設会社が協力を求めた先が日本だった。
日本の重工・造船業界にとっても、協力要請は渡りに船だった。掘削船やFPSO(浮体式の原油生産貯蔵積み出し設備)などの海洋資源関連構造物は巨大な市場があるが、韓国勢が圧倒的に強く、伝統的な運搬用商船を主とする日本勢は大きく出遅れている。ブラジル企業と手を組めば、現地の合弁造船会社を通じてペトロブラスが発注する膨大な設備を優先的に受注できる。
かくして、国内の重工・造船会社は相次いで現地の新興造船会社へ出資した。2012~2013年にかけてのことだ。
日本企業が事業参画したブラジルの造船会社は3社。IHIが傘下のジャパンマリンユナイテッドなどと共同でアトランチコスル造船所に、三菱重工や名村造船所、今治造船、大島造船所などの連合がエコビックス社の経営に参画。また、川崎重工は単独でエンセアーダ社に出資し、3陣営は技術指導部隊や造船所運営に関わる人員を現地に派遣している。
ところが、こうして日本勢が事業に参画した矢先、予期せぬ大問題が起きた。ペトロブラスを巡る大規模な賄賂・汚職スキャンダルだ。
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