アブダビ巨大油田巡る“資源外交”の舞台裏 権益を得た背景には3年越しの交渉があった

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11の生産油田と4つの未開発油田が存在。2017年までには日量180万バレルへ拡大する。

巨大油田権益を射止めたのは日本だった。

4月27日。国際石油開発帝石(INPEX)は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国で国際入札が行われていた、大型陸上油田の権益5%を取得した。同国にある、ADCO鉱区の1日当たり生産量は160万バレルと、世界6番目を誇っている。

期間は40年間と、10~20年間が一般的な石油契約では、異例の長期契約である。埋蔵量は「優に40年は超える」(INPEX)という。同社は5%の権益に応じ、日量8万~9万バレルの原油を調達できる。単独案件での原油生産量では国内最大だが、応札額は明らかにしていない。

そもそもADCO鉱区は、1939年に締結された75年間の利権契約に基づき、アブダビ石油公社(ADNOC、出資比率60%)、英BP(出資比率9.5%)、米エクソンモービル(同)、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(同)、仏トタル(同)、ポルトガルのパルテックス(出資比率2%)の6社が、権益を保有していた。

仏トタルが最初に獲得。次は?

2014年1月の利権契約更改に向け、世界中の石油開発会社が水面下で動き出したのは、2012年からだ。入札要請を受けた、欧米石油メジャーや日中韓の開発会社など11社が、事前資格審査を通過。うち2社が入札せず、9社で争うことになった。

が、入札が始まった2013年以降、動きはピタリと止まる。契約期限を過ぎた2014年1月から、同鉱区はADNOCの100%保有となった。ADNOCの総裁はスウェイディ氏だが、実質的に決定権を持つのは、アブダビの最高石油評議会のトップ、ムハンマド皇太子といわれる。

事態が急変したのは、今年1月末。仏トタルが最初に、外資に開放される40%の出資枠のうち、10%を獲得したと電撃発表したのだ。経済産業省の幹部は当時の状況をこう明かす。「(今後)BPとシェルが10%ずつ入るだろう。残り10%を日中韓が取り合う構図になった」。

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