東電を「ゾンビ企業」にしてはいけない--『日本中枢の崩壊』を書いた古賀茂明氏(経済産業省大臣官房付)に聞く
経済産業省の現役官僚による「東京電力処理私案」が話題を呼んでいる。同氏は、省益を超え既得権益を崩す公務員制度改革を訴え続けているが、ここでは「国際標準」での選択を求める。
──海外メディアから取材が多いようです。
政府が発表した原発事故に伴う東電処理スキームは、外国人にはどうしても理解できないようだ。それとは違う私案を考えた。古賀ペーパーとか古賀プランとか言われているが、先ほども、英『エコノミスト』誌に2時間ほど話したところだ。
私の案は国際標準に沿ったものだから、彼らには理解しやすい。彼らはむしろ、政府のスキームはなぜそうではないのか、と聞いてくる。背景にはかくかくしかじかの「構造問題」があると説明すると、昔、日本異質論というのがあったが、彼らの理解はそれに戻っていってしまう。
──構造問題……。
「原子力ムラ」というものがあり、政界や官界、学界、さらにマスコミも、電力業界、中でも東電に支配されてきた。そう説明すると、それが本来あるべき処理スキームから外れていく理由なのかと納得する。彼らが取材してきた「当事者」は、誰もみな東電の利害関係者であり、自身にとって都合のいいことばかりを言っているようだ。
──私案の古賀ペーパーなるものの要点は。
東電原発事故で大事なことはいくつかある。一つは被災者への補償だ。一義的に東電の責任とされているが、被災者から見ると、国にしても絶対安全と言っていたし、責任の所在を明らかにするより、早く補償してほしい、という気持ちだろう。それに応えるのがまず大事だ。
原子力損害賠償法3条の例外規定である「異常に巨大な天災地変」に当たるのかどうか。また東電の支払い能力はどうか。その調整で支払いが遅れる可能性もあるが、与野党一致で被災者に早く支払う、それも東電と国との連帯債務にしてしまうことだ。とりあえず国が立て替えて、後で東電に請求すればいい。