巨大法律事務所と最高裁、国と東電の癒着構造 『東京電力の変節』後藤秀典氏に聞く

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『東京電力の変節』著者の後藤秀典氏
後藤秀典(ごとう・ひでのり)/ジャーナリスト。1964年生まれ。NHK「消えた窯元10年の軌跡」「分断の果てに“原発事故避難者”は問いかける」(貧困ジャーナリズム賞)などを制作。岩波書店『世界』に「東京電力11年の変節」を連載。(撮影:尾形文繁)
史上最悪の原子力発電所事故を起こした東京電力ホールディングスと国を相手取った裁判は、全国で数十件に上る。いくつかの高等裁判所の判決では国の法的責任が認められたが、それらはすべて最高裁判所の判決によってひっくり返された。その背景に何があったのか──。

緊密な人的関係の存在

東京電力の変節――最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃
『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(後藤秀典 著/旬報社/1650円/192ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──本書では、巨大法律事務所と最高裁、政府、東電との間での「癒着」とも呼ぶべき人的つながりの存在が詳しく書かれています。

その象徴といえる事例が、最高裁で裁判長を務めた人物の、巨大法律事務所への再就職です。

2022年6月17日に国の責任を否定する判決を言い渡した最高裁の菅野博之裁判長(当時)が、その直後の同年8月3日、「長島・大野・常松法律事務所」の顧問に就任しました。同法律事務所は、東電の元会長らを相手取った株主代表訴訟で、補助参加人である東電の代理人を務めているのです。

──ほかにどんな事例が。

「国に責任はない」とした最高裁の多数意見に賛成した岡村和美判事は1983年、弁護士登録してすぐに「長島・大野法律事務所」(現在の長島・大野・常松法律事務所)に所属。検事任官後、法務省、金融庁、最高検察庁に在籍し、法務省人権擁護局長、消費者庁長官を務めた後の19年に最高裁判事に任命されています。

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