突然「ベンチャー転職する人」中高年が知らぬ変化 日本の転職市場に関わってきた筆者の視点

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これまで大手企業を退職してベンチャー企業に転職すれば年収が大きく下がると思われていました。それでも例外はあり、下記のようにベンチャー企業のステージによってはそうともいえなくなりつつあります。

【ベンチャー企業のステージ】
シード シードは種(seed)を意味し、会社の種をまく最初の時期
アーリー 創業後に発展する段階です。事業計画の立案をしている時期
ミドル 事業に勢いがつき、売り上げが伸びだす時期
レイター 事業が安定し、株式上場などを目指す時期

シード、アーリーの時期にベンチャーに転職すれば、ストックオプションを得て、上場を果たせば大きな利益を得られる権利が付与されることがあります。ただし、それは基本的に経営メンバーに限られた話で、若手社員としての転職は年収ダウンするケースがかなり多くありました。

ところが最近、ベンチャーにおける若手社員の年収も大きく上昇。大企業よりも年収が高い企業も増えてきました。

日本経済新聞社がまとめた、上場前ながら時価総額が高いと想定されるベンチャー企業に対する調査では、それらの年収は上場企業の平均年収を7%上回る水準であったとのこと。その理由は、資金調達の金額が大きく増加したこと。ベンチャー企業の経営者が大企業出身で、処遇面も大企業に劣らない条件設定をしているケースが増えてきたことも理由のひとつと思われます。

大企業を飛び出すことが怖くなくなってきた

さらに大企業組織によく見られる“閉塞感”が、ベンチャー企業への転職を加速させています。大企業は会社規模も大きく、社員数もたくさんいます。ところが、大きな組織に所属していながら、自分の可能性を試す機会が少ない、頑張っても報酬が変わらない……こうした感触になり、閉塞感を抱く人が少なくありません。

大企業では35歳前後までは大きな差がつかない人事システムになっているのは当たり前。中には40歳になっても見た目上は大きな差がつかない場合もあります。しかも、社内での異動に自分の意見は尊重されないこともザラです。学歴重視の雰囲気が色濃い企業もまだまだあります。

例えば、入社以来、20年以上、同じ職場で同じ仕事を任されている知人がいます。その知人曰く「自分は変化を希望しないけど、若手社員からすれば化石のような存在かもしれない。そうならないようにベンチャー企業へ転職をしていったケースをいくつも見てきた」と話してくれました。こうした閉塞感の打破には同業他社への転職では何も変わらない可能性が高い。ベンチャー企業であれば、かなえられると考えるのでしょう。

ただ、こうした状況は長年続いてきたにもかかわらず、多くの人は転職するまでには至りませんでした。それは、大企業を飛び出しても、希望に満ちた職場なんてないと考えて、我慢していたのだと思われます。前述のように両者間の給与格差の問題もありました。

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