突然「ベンチャー転職する人」中高年が知らぬ変化 日本の転職市場に関わってきた筆者の視点

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ところが、ベンチャー企業で働く人の仕事ぶりといった情報がネット上でたくさん見られるようになりました。ベンチャー企業に転職したら、自分の希望で仕事が選べる。新しいことにいくつもチャレンジできる。頑張って成果を出せば、前職をはるかに上回る報酬を得られたーー。こうした成功例が周囲でも見聞きされるようになり、大企業を飛び出すことが怖くなくなってきたのかもしれません。

こうして、大企業からベンチャーに転職することが大きなトレンドになりつつあります。では、このトレンドは続くのでしょうか?

若手人材にとってベンチャー企業への転職はいまや大変魅力的な選択肢となっています。さらに言えば、大企業に数年勤務してから転職することはキャリア上も輝かしいことと考える人が増えています。こうしたトレンド自体が今後なくなることはないでしょう。

新卒採用した人材の離職なんてめったにないと考えてきた人気企業でもベンチャー企業への転職が起きており、その離職を阻止できないことに苦慮している大企業の人事部の人の話を聞くことが増えています。

ある人気の高い総合商社の人事部に話を聞いたところ、10年前なら離職、ましてやベンチャーへの転職はレアなケース。残った人材からすれば「ついていけなくなったに違いない」「自分とは違う価値観の決断」と捉えていたので、人事部も対策は不要でした。

ところが最近は転職数が大幅に増えており、社内で期待の人材が“胸を張って”辞めていく。残った人材がうらやましい、自分も追随したいと考えるようになってきたので、対策を考えないと人材流出は加速する懸念が出てくると話してくれました。まさにベンチャー企業への転職阻止に向けた対策を考える大企業が増えてきています。

大企業の期待の若手がベンチャーに転職する時代

ベンチャー企業という隣の芝生が青く見え、一方の大企業がかすんで見えがちな状況ですが、大企業側が「閉塞感のある状態」に問題意識を持たず、現状のままでいいと考えていたら、人材流出が加速するだけでしょう。

2000年代初頭には新卒採用された社員の離職なんて皆無でした。ベンチャーに転職するなんて言うのは負け組が考えること、などと思われていた大企業でも期待の若手がベンチャーに転職する時代になり、この課題は人事部任せでは解決困難になりつつあります。経営トップの号令で対策を考えて、速やかに実行すべし……との大きな動きにまでなってきています。

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