わが子への期待を「極限まで下げるべき」納得理由 「なぜできないの?」と思ってしまう親のズレ感

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そのため、親は「子どもへの期待をしない」のがよいのですが、「期待をしない」という言葉は誤解を招きやすいため、「期待値を究極まで下げる」という言葉を筆者は使っています。

「感謝と満足」の気持ちを持って子どもに接する

では、「期待値を究極まで下げる」状態とは、どのようなことをいうのでしょうか。

それを筆者は次のような状態と考えています。

「子どもが元気で生きているだけでありがたく、『感謝と満足』の気持ちを持って子どもに接する状態のこと」

つまり、今生きているだけでラッキーという状態です。例えば、何か想像もしないような大きなアクシデントが起こり、1週間後に出会えたとしましょう。きっと「生きていてよかった!!」と言って涙を流しながら抱き合うと思います。そのときに、「宿題はやったの?」とか「もっと勉強頑張らないとね!」とは決して言わないはずです。これが期待値が究極まで下がった状態と言います。ですから、子どものことを諦めたとか、どうなっても構わないというネガティブな状態ではありません。

親の子どもへの期待値が下がると、子どもは親の期待を超えるよう次々と行動を起こします。例えば、先ほどの例で言えば、60点だった子にそもそも期待をしていないと70点を取ってきたときに「え!すごいじゃない!70点も取れたの!」と言うと思います。(この言葉の後に、もっと頑張れば80点だねとは言いません)このように言われた子はどうでしょうか。親を喜ばせることができて嬉しいと思って、もっと喜ばせたいと思うはずです。

これが「子どもが自ら動く仕組み」です。

孫ができると、孫には健康で元気でいてくれるだけで嬉しいと思うようになります。すると期待値は下がっているので、ちょっとした孫の言動にでも、祖父母は驚き、喜びます。孫はそれが嬉しくて、さらに祖父母を喜ばせようとしていきます。

しかし親だと、子どもに「あれもやらせないと、これもやらせないと」と思うことで指示や命令、時には脅迫構文も出てくるわけです。それらが頻繁に出ていると、子どもはいつまでも親の期待に応えることはできません。

以上、親の期待値がもたらす子どもへの影響についてお話ししてきましたが、中途半端に期待値を下げると、まだその期待値を子どもが超えられないこともあります。ですから大竹さんの場合は一旦、究極まで下げてしまってはいかがでしょうか。そこまで下げたほうが、結果として子どもが自ら動くという一見矛盾した現象が起こります。なかなか信じられないかもしれませんが、一度実行されてみてください。子どもの変化に驚くと思います。

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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