イタリアで「同性愛の少年たち」の身に起きた悲劇 映画「シチリア・サマー」実話をモチーフに描く

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花火師の父と優しい母親のもと、大家族に愛情いっぱいに育てられた16歳のニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ)は、親から買ってもらったばかりのバイクを走らせていた。だが見通しが悪い道を走らせていたニーノは、別の道から走ってきたもう1台のバイクと衝突事故を起こしてしまう。

そのバイクを運転していたのは17歳の少年ジャンニ(サムエーレ・セグレート)だった。彼は衝突のショックで道ばたに放り出されてしまい気を失ってしまう。心配になったニーノはとっさに人工呼吸を施し、ジャンニは無事に息を吹き返した。2人の出会いはそうやってはじまった。

以前から同性愛者であることを知られていたジャンニは好奇の目にさらされ、近所の住人たちからは連日のように心ない言葉を浴びせられていた。彼自身は内気な性格で、友だちもなく孤独な日々を送っていたが、ニーノとの出会いをきっかけにジャンニの人生は少しずつ変化していく。

シチリア・サマー
ジャンニ(左)の人生はニーノ(右)との運命的な出会いによって変化していく© 2023 IBLAFILM srl

母親の恋人が営む整備工場ではこき使われてばかりだったジャンニだったが、ニーノの伯父が責任者を務める採掘場で働くことになったのだ。初日の仕事を終えたジャンニを迎えに来たニーノは「僕しか知らない場所を見せたい」と告げ、新緑に囲まれた泉のほとりに連れていく。2人だけの秘密の場所を共有した2人は、そこで友情を深めあう。

ジャンニは太陽のように陽気で無邪気なニーノに心惹かれ、ニーノもまたジャンニの秘めた情熱に魅せられていくようになる。そうした2人の友情がやがて愛情に変化していくのに時間はかからなかった。だがジャンニの母親は、息子の変化を敏感に感じ取っていた――。

実際にあった事件がモチーフに

本作のモチーフとなっているのは、果樹園の木の下で2人の若者の遺体が発見され、イタリア中に衝撃を与えたジャッレ事件と呼ばれる悲劇だ。

銃で撃たれた2人は手をつないだ状態で横たわっていたという。彼らは地元では知られた同性愛者のカップルであり、事件前から社会や家族の不寛容、偏見、好奇のまなざしなどにさらされていた。

1980年(映画ではW杯に沸く82年に脚色)に起きたこの事件の背景には同性愛者に対する憎悪があるのではと見立てて、現地には多くの報道陣が殺到する事態になった。亡くなった若者の葬儀には、2000人を超える参列者があったという。

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