イタリアで「同性愛の少年たち」の身に起きた悲劇 映画「シチリア・サマー」実話をモチーフに描く

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そしてこの悲劇をきっかけに多くの若きシチリア人たちが街頭でデモ活動を行い、その流れで“ARCIGAY(アルチゲイ)”という非営利団体がシチリアのパレルモで設立された。ARCIGAYはその後全国に拠点を拡大し、イタリア最大の団体として、現在もLGBTI の人々に対する偏見や差別と闘っている。

ちなみに余談だが、G7主要7カ国の中で日本と同様に、長きにわたって同性婚をめぐる対応に遅れがあると指摘されてきたイタリアだが、2016年には同性カップルに、結婚に準じた法的権利を認めるシビル・ユニオン法が制定。同性カップルに対しての遺産相続、社会保障などの権利が認められるようになった。

悲劇の真相は謎に包まれている

彼らが誰の手によって死に至らしめられることになったのか、その悲劇の真相に関してはいくつかの仮説が流布しており、謎に包まれている。それゆえ本作でもそうした“事件そのものの真相”を描くことには主眼が置かれていない。

あくまでも社会や家族の不寛容、無理解の中で、それでもありのままの自分の思いを貫こうと生きた2人の少年の青春のきらめきのようなものを美しく、せつなく切り取っている。

本作のメガホンをとったジュゼッペ・フィオレッロ監督は、この事件について「子どもの頃からニュースで知っていて、よく話題になっていたが、当時のわたしはこの事件を深く理解するには幼すぎた。当時は同性愛をタブー視する傾向もあったため、家でも明確に語られることなく、うわさレベルで終わっていた」と述懐。

だが事件から30年たった時に、イタリアの新聞に掲載されたこの事件の特集記事を読み、2人の純粋かつ詩的な愛に感銘を受けたという。彼は90年代から映画、テレビ映画などに出演してきたベテラン俳優であるが、その記事の切り抜きを何年も保管し、この物語を「いつか自分の手で語りたい」と決意していた。そしてこれが彼にとって初の長編映画監督作となった。

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