虎屋が古くならないのは、なぜなのか 正統派和菓子の老舗は立ち止まらない
今、「目利き力」の大切さが問われている。「目利き力」とは、経済・ビジネスの世界では、将来の成長が期待できて、今後伸びる会社を見いだす力を意味すると同時に、経営が傾き、存続が怪しくなっている会社を見極める力という意味も含む。
金融庁や経済産業省などの政府機関も、最近、「事業性評価力」としての「目利き力」の重要性を指摘している。企業の新陳代謝を活発にして「稼ぐ力」のある企業を増やし、なおかつ長期にわたって企業を存続させることで、少子高齢化社会にあっても日本経済を着実に成長させる仕組みを作らないといけないためだ。
企業の信用調査を長年行っている「帝国データバンク」は『御社の寿命 あなたの将来は「目利き力」で決まる!』で、帝国データバンクが長年蓄積した取材データに、読売新聞の経済記者である私による新たな取材と分析を加え、「目利き力」を育てるヒントを豊富に盛り込んだ。
その柱のひとつとして、全国各地で長年にわたって経営を続け、存在感を示している老舗の社長を取材し、会社を息長く経営するためにどのような努力や工夫が必要なのかをインタビューでまとめている。その中から虎屋、岩井の胡麻油、ホテル佐勘について紹介したい。まずは虎屋から。
虎屋社長に聞く、経営の極意
――御社のこれまでの歩みについてお聞かせください。
室町時代後期、京都で創業しました。後陽成天皇の御在位中(1586〜1611年)から御所の御用を勤めていたという記録が残っています。明治2年の東京遷都の折、京都の店はそのままに東京に出店しました。店主は代々黒川家の人間が務め、私で十七代目となります。
――伝統的に伝わっている会社の教えなどはありますか。
社是、社訓などはありませんが、九代目当主が1805年に書いた「掟書」が残っています。そこには「天正年間(1573〜1592)にあった掟書を書きあらためた」と書いてある。15条から成っていまして、「働く者の心得」が書いてあります。「女性やお子様のお客様にはより丁寧に接するように」「噂話をこちらから言ってはいけない」と接客の心得が書いてあったり、「将来独立することもあろうから、つねに勉強を怠らないように」という呼びかけもあります。基本的な姿勢や考え方は、今の時代にも十分通用するものです。
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