日テレ新会社は「ネットとテレビの接着剤だ」 独占!HAROiD社長がすべてを語った

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もっとも、日本テレビの番組を変えていくだけならば、HAROiDを起業する必要はなかったはずだ。テレビ局のビジネスモデル、制作の仕組みなどを充分理解した上で、インターネットの事業モデルにも精通する人材がいれば、局内だけで問題を解決できる。しかしながら、テレビ放送事業の未来を考えるならば、ひとつの局内に閉じるべきではないと安藤氏は言う。

「実はJoinTVは日本テレビだけのアイディアとして閉じるのではなく、社外にも積極的に使ってもらえるようオープンに仕様などを公開してきました。しかし、WOWOWや地方局などに使ってもらった例はありましたが、さらに在京キー局に拡げようとなると日本テレビ内部では限界があります」

その一方、ネットの中にあるソーシャルネットワークを中心として様々な商品、コンテンツが流通する世界とテレビの間をつなぐことで、テレビ放送事業のあり方やエコシステムの形を変えられる、という確信も、強まったという。これはJoinTVによって得られた手ごたえだ。

「そこでJoinTVのさらにその先、スマートデバイス、スマートテレビを見すえたプランを、まずは社内で経営陣にプレゼンテーションしてみたのです。そうした流れの中で、日本テレビ自身がHAROiDの最初の出資者となって、ネット上でのエンターテインメントコンテンツを合弁会社を作ろうということになりました。バスキュールは他局とも大きな予算でネット連動番組企画などを成功させていますから、彼らとともに日本のテレビ放送局すべての蓄積した技術、ノウハウをフレームワークとして提供するのが、HAROiDの基本的な設立趣旨です」

動きの速いネットと放送事業をつなぐ接着剤

安藤氏の話すHAROiDの事業モデルは、インターネットの中に日々生まれ、変化していく多様なサービスプラットフォームと、標準規格と法規制で事業の枠組みが定められている放送事業。視点や感覚、事業規模や想定するオーディエンスの数が異なる異世界の間に入り、隙間を埋める接着剤のようなものだ。

「受像機としてのテレビは映像配信を直接受ける機能などは増えてきましたが、スマートフォンやタブレットのような”スマートデバイス化”はあまり進んでいません。映像を楽しむための大画面を情報受信、それもパーソナルな情報を表示するためにテレビは適していません。新サービス、新コンテンツに対応するテレビが限られていると、全視聴者に同じコンテンツを届ける”放送”では、番組内で積極的に使いにくいからです」

振り返ればJoinTVが注目されたのは、地上アナログ放送打ち切り直前というタイミングに、日本のデジタル放送対応テレビのすべてに搭載されているデータ放送を積極活用することで、テレビが本質的に持つスケールの大きさを取り込む事ができたからだった。しかし、普及率の高さと引き替えにデータ放送の限界は低い。15年以上前の技術を元にしているからだ。

「しかしやっとテレビのスマート化も方向が見えてきました。グーグルがGoogle TV Platformを発表し、ソニーを筆頭に多くの企業が対応を表明してます。パナソニックはFirefox OSを採用。さらに総務省が推進するハイブリッドキャストもHTML5を基礎にしたアプリケーションを開発できる。このようにいくつかの技術プラットフォームに収斂しはじめています。それらすべてに対応出来る開発フレームワークと企画・開発を、ワンストップでテレビ放送事業者に提供できるようにする。まずは、そこから事業を始めるつもりです」

新たなサービスへの接続を行い、何らかの機能性やアプリケーションを提供する時、特定のテレビだけでしか使えないのでは白けてしまう。それでは”スマート化がテレビで進む”といったところで、誰もスマートテレビ向けアプリを開発しようとはしない。そこで、どんなプラットフォーム技術を使ったテレビなのかは意識させない、スマートテレビとテレビ番組を関連付けた企画を可能にしよう。そのためのノウハウや技術、開発フレームワークを提供するのがHAROiDということだろう。

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