母親の「子連れ出張」に理解が及ばない日本の現実 やる気があっても「出張できない」母親たちの苦悩

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親たちの子連れ出張はもっと可能になっていくでしょうか?写真は、学会開催時に設けられた託児スペース(写真:筆者提供)

共働き夫婦が急増する中、多くの家庭が頭を悩ませている問題がある。それが「母親の出張」だ。

共働き子育て世帯であっても、夫が出張する場合は問題にならないことが多い。妻が当たり前のように家で子どもの面倒を見るためだ。一方、妻が出張となると、状況は全く変わる。

普段から育児が母親に偏っており、子どもが母親がいないことを不安がるため夫に預けて出張できない、夫の帰宅時間が遅く子どもを保育園のお迎えに行けない、といった家庭も多いためだ。とくに子どもが乳幼児、未就学児の場合には、こうした壁にぶつかりやすい。

子連れで「仕事」に参加することは難しい

今年7月下旬、松川るい参議院議員ら自民党女性局の議員ら38名がフランスに研修に行った際、エッフェル塔の前で撮った写真をX(旧ツイッター)に投稿し、「まるで観光旅行だ」と批判を受けて炎上した。のちに、松川議員が子どもを伴っての渡航だったことがわかり、大使館に子どもを預けたなどとして、さらに批判を集めた。

その後も、愛知県豊橋市で行われた市議会で、市議が質問の順番を決める抽選会に、発熱して保育所に預けることができなかった2歳の子どもを連れて参加することを希望したが、許可されなかったことが報道された。

子連れ仕事の場合の保育に税金を使うか否かの差はあるものの、議員、公務員、民間の会社員、いずれであっても子連れで「仕事」に参加することは難しい。

結果的に、家に子どもを残して出張できない母親は多く、仕事上の制約や支障、またキャリア上の困難につながりやすい。そうした中、こうした問題に積極的に取り組み始めた業界もある。大学などアカデミアの世界だ。

東京大学は8月31日に「子の出張帯同費用の支給」についての“総長裁定”を発出した。研究者が子どもを連れていかなければ出張を諦めざるを得ないような場合に、一定の条件を満たせば、研究費の活用ができるようにするというものだ。

大学の研究者は通常、自身で外部の民間財団などから研究費を獲得する。その中から、実験や調査などに使う機器・ソフトや書籍などの購入、学会や調査のための交通費などの必要な経費を支払う。

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