アメリカは大英帝国のように衰退しない--ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

ある国が圧倒的なパワーを持っている状況は、「覇権的」という言葉で表現される。そしてまた多くの専門家は、新興国のパワー増大と、革命が進行中の中東におけるアメリカの影響力減退を例に挙げ、「アメリカの覇権が弱まっている」と主張している。

しかし、その言葉の使い方には混乱がある。パワーを保有していても、望む結果をつねに手に入れることができるわけではないからだ。

それを理解するためには、第2次世界体戦後の状況を思い起こしてみる必要がある。当時、アメリカは世界のGDPの3分の1を占め、核兵器では圧倒的優位を確保していた。それにもかかわらず、アメリカは中国の共産化や東欧での共産主義の巻き返しを阻止することも、朝鮮戦争の膠着を回避することもできなかった。加えて、ベトナムの民族解放軍に勝てず、キューバのカストロ体制を排除できなかったのである。

アメリカの覇権が唱えられた時代でさえ、軍事力により他国の変革を目指した政策のうち、成功したのはわずか1割、経済制裁が効果を発揮したのは半分にすぎなかった。だが多くの人は、アメリカは覇権国家であり、大英帝国のように衰退すると信じている。

アメリカの財政問題は解決可能である

“衰退”という言葉は、パワーという言葉が持つ異なる二つの意味を混同している。一つはパワーを効果的に活用する能力の喪失という意味での“絶対的な”衰退であり、もう一つは他の国のパワーがより大きくなるか、より効果的に使われるようになるという意味での“相対的な”衰退である。

たとえば17世紀のオランダは国内的に繁栄したが、他国が勢力を増すにつれて相対的なパワーは減退していった。これとは逆に、西ローマ帝国は他の国に制圧されることはなかったが、国内での内紛と蛮族の大規模な流入によって滅びた。

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