防衛省の装備調達は、これから大きく変わる キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<上>

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中谷元防衛大臣(右)と防衛省経理装備局装備政策課の堀地徹氏(左)
武器輸出を事実上禁止してきた「武器輸出三原則等」(武器輸出三原則と武器輸出に関する政府統一見解の総称)が緩和されて「防衛装備移転三原則」が新たに採用された。
これによってわが国の武器輸出や共同開発などが可能となった。現在インドに対しては飛行艇、US-2、オーストラリアとは「そうりゅう」級潜水艦の輸出に関してそれぞれの政府との協議が進められている。また昨年からは国際的な軍事見本市にも日本政府の主導ではないが日本パビリオンが設けられ、日本企業の出展も増加してきている。
今後、国家財政を鑑みれば防衛費が大きく伸びることは想定できない。開発費のシェアによる開発コストの低減、また開発リスクの低減、量産効果による調達単価などよって装備調達コストを低減させるためにも国際共同開発を進めることは喫緊の問題となっている。
同時に国際的にみて調達コストが高い、非効率である国内防衛産業と防衛省自体の体質改善も待ったなしだ。その文脈からは装備調達の効率化も進められており、近く諸機関を統合・再編した防衛装備庁が新設される予定だ。今後10年で日本の防衛装備政策は外国を巻き込みながら大きく変貌する可能性が高い。
今回は防衛装備行政のキーマンである防衛省経理装備局装備政策課の堀地徹課長に防衛装備移転と装備調達の今後について話を聞いた。今回はその前編。

「基準とプロセスを明確化する必要があった」

――日本政府が従来の事実上武器輸出を禁じる「武器輸出三原則等」を「防衛装備移転三原則」に変更した理由は何か。

海外との防衛協力への取り組みが増えたために例外が多く出てきたため、民主党政権時に、例外の包括化、一般化を行った。だがこれは非常にわかりづらいし、企業側も何が許されて何が許されないかよくわからない。だからそれをさらに進めて、基準とプロセスを明確化する必要があった。

――「防衛装備移転三原則」への変更は国内市場の縮小に対して輸出で生産金額を増やし、一定規模の生産規模を確保するための意図があるか。

「防衛装備移転三原則」への政策変更は経済的な観点からではなく、武器輸出は平和貢献・国際貢献に資する場合、安全保障に資する場合のみに限定されている。つまり政策的なメリットを重視している。ビジネスや市場を広げることが目的ではない。しかしながら結果として移転案件の増加は起こるかもしれない。今まではほぼ移転ができなかったので、共同開発のアプローチなど海外からはなかったが、これからは増加するだろう。

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