日ハム新球場「新駅計画」で露呈、JR北海道の限界 大量離職でノウハウ流失、建設費が高額に

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近年のJR北海道の新駅整備については、企業や自治体が費用の全額を負担する請願駅方式が前提で、2022年3月に開業した札沼線(学園都市線)のロイズタウン駅では平屋の駅舎と6両分ホーム1面(135m)に約9.3億円の事業費が、宗谷本線の名寄高校駅では待合室と2両分ホーム1面(50m)に約6000万円が投じられた。

特に、製菓メーカーのロイズコンフェクトが全額を負担したロイズタウン駅については割高感が否めない。富山県の新駅や名寄高校駅のデータを参考にホーム10mあたり1000万円の建設費を基準にするとロイズタウン駅のホームは135mで建設費は約1.4億円ですむことになる。また、国鉄分割民営化を翌年に控えた1986年からJR北海道発足後の1995年にかけて札幌近郊の発寒中央や新川など13駅の大半が自費で新設されたが、当時をよく知る関係者は新駅建設費については「1駅で1億円もかかっていなかった」と証言する。筆者はJR北海道に対してもこれらの新駅建設費について質問をしてみたが、「請願駅以外の新駅については、建設費の対象範囲は曖昧で駅により異なるため回答できない」とのことであった。

鉄道素人集団に成り下がった?

本来であれば、エスコンフィールド北海道の開業は、JR北海道にとっても大きなビジネスチャンスになるはずで、地域との連携のもと速やかに新駅を建設し利便性の向上を図ることで鉄道利用者の拡大を図ることが鉄道事業者の務めである。

しかし、あるJR北海道関係者は「鉄道計画に詳しい幹部の大半はすでにJR北海道を去っている」と証言する。こうしたことから、JR北海道にはすでに鉄道経営を行う力はなく、鉄道素人集団に陥っていることが予測される。

札幌市の人口は約195万人で小樽市や千歳市なども含めた札幌都市圏の人口は250万人に迫る。2022年度の札幌都市圏の輸送密度は、空港アクセスを担う白石―苫小牧間の3万8410人が最も多く、ほかの路線も大半が3万人を超えている。これだけ利用者の多い札幌都市圏にもかかわらず年間の赤字額は約71億円であった。満足な鉄道経営はおろか新駅計画すらままならないJR北海道は不思議としか言いようがない。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。

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